想いを、安心できる言葉で
「もっと言葉で伝えてくれないと、理解できないでしょ?」
小学生の頃に受けたこの言葉で、とどめを刺されたようでした。自分なりに意思表示しているつもりでも、相手に受け止めてもらえないことが多かった幼少期。やがて人の顔色を伺いながら言葉を慎重に選ぶようになり、気づけば自分は何が好きで、どうしたいのかすら分からなくなっていたんです。
そんななか、自分を表現する手段として選んだのが“音楽”でした。幼少期から続けていたピアノに加え、高校時代にはシンガーソングライターのYUIさんに憧れて「歌を作ってみたい」と思うようになったんです。けれど、「作曲についてしっかり勉強しないと難しいだろう」と先延ばしにしていました。
そんな大学3年生のある夜、感情が揺れ動いた体験がスッと曲になった瞬間があったんです。その感覚がもう、心地よくて……。
この経験から、「難しいことを考えなくても、感じた気持ちをそのまま言葉と音に乗せればいい」と肩の力が抜け、するすると曲が書けるように。自分の想いを歌で表現できることが、純粋に楽しかったですね。
それから7年ほど、自作曲を演奏するライブ活動を続けてきました。その合間にラジオパーソナリティーをする機会をいただいたり、ライターの仕事を始めたりと、言葉を使った表現方法について模索し、試行錯誤してきましたね。
それでもまだ、自分の心の底にある気持ちを表現できていないような感覚がありました。同時に、「人に想いが届いたという実感」も持てずにいたんです。
時は流れ、コロナ禍でライブ活動が難しくなった時期にウェルネス(=よりよく生き、自己実現を目指す考え方)を深めるコミュニティに出会いました。そこで初めて“対話”というコミュニケーション方法に触れたんです。
“対話”ではどんな言葉も一旦受け止めてもらえるので、安心して話せる感覚がありました。「私が今まで望んでいたコミュニケーションは、これかもしれない!」と、心の底から喜びを感じられたんです。
居心地の良いコミュニティから、新たな繋がりも生まれました。それが、つむぎ株式会社です。
実はインタビューをするお仕事には、以前から憧れていました。
ですので、当時すでに紡ぎ手だったコミュニティメンバーから、「インタビューライティングをやりたい人を探している」と言われたときは、「チャンスだ!」と嬉しくてすぐに飛びつきましたね。
学生時代にちょっとしたMCやインタビューを経験したことをきっかけに、「人の想いを聞く」という楽しさをずっと忘れられずにいたんです。
念願のインタビューに挑戦してみると、話し手のことを愛おしく思う感覚に気づきました。
インタビューという状況だと、役職や立場を問わず、一人の人間として対等にお話できるんです。話し手の想いに触れるうちに、体の中から温かい気持ちが溢れ出して……。今まで一度も出会ったことがない感覚に、最初は驚きました。
作詞で表現の数を重ねてきたからこそ、インタビューの空気感を文章に落とし込むことにもこだわっています。たとえば、お仕事が好きでたまらない気持ちが伝わってきた方の文章には、会社との出会いに「一目惚れ」という単語を使って愛に溢れた雰囲気にしたり。
楽しげな語り口が印象的な方の原稿には、「楽しい」「おもしろい」といったワクワク感が伝わる言葉を散りばめたり……!表現をひと工夫するだけでグッと心惹かれませんか?
——「もっと言葉で伝えてくれないと、理解できないでしょ?」
冒頭でも綴ったこの言葉が引き金となり、言葉の表現や想いの伝え方に悩み続けてきました。ですが、人一倍傷つきやすいからこそ、誰よりも相手を不安にさせない技術が身についているのかもしれない。
そう気づけたとき、私がずっと求めていた「安心して表現できる場所」は、私自身が作っていけばいいんだと思えたんです。
そんな想いから、最近では音楽を使った対話のワークショップにチャレンジし始めました。インタビューでも、まずは安心してお話ができるような雰囲気づくりを心がけています。
私は、過去に不安や苦しみを乗り越えてくれた自分のおかげで、ここまで来られました。これからの活動はきっと、過去の私のように苦しんでいる誰かの“安心感”に繋がると信じています。
やっと見つけた私らしい表現のあり方。人生のすべてを詰め込んだ挑戦を、“安心を届ける言葉”で叶えていきたいです。