トヨタモビリティパーツ 茨城支社に学ぶ、改善が根づく組織づくり

トヨタモビリティパーツ茨城支社ロゴ

当社が主催する、「人財」を自社の強みとしている企業が集うコミュニティ「人・組織創りラボ」。

同コミュニティでは、人や組織づくりにおいて学びのある企業を実際に訪ね、その会社で働く人の言葉や、日々の仕事が生まれている現場から学ぶ視察会を行っています。

今回訪問したのは、トヨタモビリティパーツ株式会社 茨城支社。

当日はお話を伺いながら、オフィスや現場を撮影させていただきました。

視察を終えて、まず心に残ったことがあります。

それは、今目の前にある素晴らしい制度や仕組み以上に、その景色にたどり着くまでの時間でした。

2013年頃から、10年以上。

研修を重ね、外へ学びに行き、対話を増やし、仕事の進め方を変え、時には思うように進まない時期も経験しながら、少しずつ、少しずつ組織を変えてきた。

完成された仕組みを見せていただいたというよりも、長い時間をかけて育て続けてきた「文化」に触れさせていただいた。

そんな一日の様子を、お届けします。

 

「何のために働くのか」から始まった、10年以上の変革

茨城支社の組織変革が始まったのは、2013年頃。

当時も、決して成果が出ていなかったわけではありません。

営業成果を上げ、生産性を高め、品質を向上させ、コストを下げる。社外から評価される実績も積み重ねていました。

それでも、その先で向き合うことになったのが、

 

「私たちは、何のために仕事をするのか」

 

という問いでした。

商品を売ることが目的なのか。
目標数字を達成することが目的なのか。

それとも、その先にいるお客様のお役に立つことなのか。

お客様がまだ気づいていない課題まで想像し、その解決に向けて自分たちにできることを考える。

そこまで仕事の意味を広げようとすれば、当然、これまでと同じ働き方では届きません。

必要な能力も変わるし、仕事の進め方も変わる。上司と部下の関係も変わる。
組織全体の「当たり前」そのものを変えていく必要がありました。

そして、その変化は一朝一夕に生まれたものではありません。

 

 

答えをもらうのではなく、自分で考える。「担当者が主役」の仕事

お話を伺う中で、特に印象的だった言葉があります。

それは、「担当者が主役=担当者持ち上げ型ボトムアップ」でした。

かつては、担当者から課長へ、課長から部長へ、部長から経営層へ。案件が上へ上へとリレーされ、上位者が判断する仕事の進め方だったそうです。

現在は違います。

担当者自身が調べ、現場を見る。
人に会って、話を聞く。

そして、集めた情報をもとに自分なりの考えをつくり、課長や部長のサポートを受けながら、自ら意思決定の場まで持っていきます。

もちろん、最初からできたわけではありません。

何度調べても情報が足りなければ、もう一度聞きに行く。戻って考え、それでも足りなければ、さらに別の場所へ学びに行く。

そんな経験を繰り返すことで、ただ目の前の事例を見るのではなく、その背景や意図まで考えられるようになっていったといいます。

上司が答えを教えるのではなく、一緒に情報を並べ、一緒に考える。

そこには、「任せる」という一言だけでは表せない、丁寧な人の育て方がありました。

 

そしてもう一つ、現場を歩いていて心に残ったのが、いたるところにあった「ありがとう」の言葉です。

先輩から後輩へ。後輩から先輩へ。部署や立場を越えて、「困ったときに教えてくれてありがとう」「改善してくれてありがとう」「いつも助けてくれてありがとう」と、小さな感謝を言葉にして送り合う。

 

部品の仕分けを行う現場は、黙々と一人ひとりが作業に向き合う、とても静かな場所でした。

けれど、不思議とそこに冷たさはありませんでした。

大きな声で会話を交わしていなくても、誰かが誰かを見ている。
困っていたら助けるそ。して、教えてもらったら「ありがとう」を返す。
誰かの改善によって仕事がしやすくなったら、それもちゃんと言葉にする。

目の前では静かに作業が進んでいるのに、その一枚一枚のメッセージを見ていると、働く人たちの声が聞こえてくるようでした。

「担当者が主役」という言葉も、決して「一人でやりきる」という意味ではないのだと思います。

一人ひとりが自分の仕事に責任を持ちながら、その挑戦を周囲が支え、感謝し合う。

主体性と、支え合う温かさ。
その両方があるからこそ、安心して自分の意見を伝えたり、新しいことに挑戦したりできる。

静かな現場の中に、人と人とのつながりが確かに息づいている。そんな温度を感じたことも、今回の視察でとても印象に残った景色の一つでした。

 

小さな違和感を、そのままにしない。「ちょこ改善」

そして、今回どうしても紹介したい取り組みが「ちょこ改善」です。

日々仕事をする中で、

「少しやりにくい」
「ここは危ないかもしれない」
「こうした方が良さそう」

そんな小さな気づきがあれば、まずメモに書いて貼る。仕組みだけを聞けば、とてもシンプルです。

でも、私が素敵だと感じたのは、そのあとでした。

貼られた声を拾う人がいる。改善できれば「直したよ」と返す。
すぐに対応できなければ「少し時間をください」と返す。

そして、その気づきがさらに大きな改善につながれば、次の改善提案や創意工夫へと発展させていく。

気づいて終わりにしない。
声を上げて終わりにしない。

自分が発した声によって、実際に職場が少し変わる。

半年に一度、代表が職場を回り社員の声を聞く「職場訪問」でも、出された要望には必ずフィードバックをするそうです。

「言っても何も変わらない」

そんな経験が重なれば、人はいつしか声を上げなくなります。

反対に、

「言ったら誰かが見てくれた」
「自分の気づきから職場が良くなった」

そんな経験が積み重なれば、また次の気づきを伝えたくなる。

主体性は、ただ「主体的に動いてください」と伝えるだけで育つものではありません。

自分の声に、組織がきちんと応えてくれる、その信頼の積み重ねが、改善を「制度」から「文化」へと変えていくのだと感じました。

 

「価値」を考え、会社をひらく。人が行き交うオフィスへ

茨城支社では、売上実績を確認する会議を見直し、「顧客価値」について考える時間を大切にしてきました。

現在も続く「価値共有ミーティング」では、優れた企業の事例や仕事の進め方、マネジメント、組織風土などを題材に、

「自分はどう思う?」
「私たちの会社だったらどうだろう?」

と、みんなで対話します。

そこでは、必ずしも一つの答えを出すことが目的ではありません。

外を知り、考え、自分たちの仕事に置き換えてみる。

そうした積み重ねが、長い時間をかけて「自分たちで考えていい」「自分たちで変えていい」という感覚につながってきたのだと感じました。

そして、その姿勢は今、社内だけにとどまりません。

茨城支社は2023年8月、以前の拠点から水戸駅周辺へ移転。

交通の便が良く、人の目にも触れやすい現在の立地を活かし、地域の企業や住民、子どもたちや学生など、外部の方々との交流をこれまで以上に積極的に行っています。

多い週には、企業の視察や挨拶などで10社ほどが訪れることもあるそう。

地域企業とのノベルティづくりをはじめ、子どもたちや学生の職場体験を受け入れ、社員のみなさん自身が仕事を案内したり、一緒に学びの時間をつくったり。

それが特別なことではなく、日常の景色になりつつあります。

 

実際にオフィスを歩いていても、人の流れを感じる、とても開放的な空間でした。

部署ごとにきっちり分断するのではなく、自然と顔を合わせ、気軽に声を掛けられる。

社員同士はもちろん、そこに外部の方も加わり、新しい会話が生まれていく。

役職や部署で人を隔てるのではなく、できるだけ壁をつくらず、誰もがコミュニケーションを取りやすい環境にしたい。

そんな考え方が、空間の細部からも伝わってきました。

 

会社を訪ねてくる人がいて、地域のことを教えてくれる人がいる。

子どもたちから思いがけない質問を受けることもあったり。

社員にとっても、いつもとは違う人と出会い、自分たちの仕事を改めて言葉にする機会になる。


「外にひらく」ということは、単に地域貢献の機会を増やすだけではなく、社員自身の視野や仕事への向き合い方を広げていくことにもつながっているのかもしれません。

静かに仕事だけが進んでいくオフィスではなく、いつもどこかで人と人が交わり、新しい会話が生まれている。

そんな、人の気配が絶えない場所。

10年以上かけて育ててきた「対話する文化」が、今は社内の枠を越え、地域へと少しずつ広がっていること。

その景色が、とても印象的でした。

 

組織づくりの考え方は、働く場所にも続いていた

オフィスを歩いていても、その考え方は随所に感じられました。
オフィスをつくるうえでのキーワードは、「対話」と「集中」。

一部の担当者だけで設計するのではなく、各グループの所属長や代表社員のみなさんも参加し、意見を出し合いながらつくった場所だそうです。


偶発的な会話が生まれる共有スペース。

グループを越えてアイデアを交わせる場所。

そして、一人で集中して仕事に向き合える環境。

 

「一人ひとりが主体的に活動し、パフォーマンスを発揮できるオフィス」という考え方が、空間そのものに表れていました。

 

働く人に「主体的になってほしい」と伝えるだけではなく、その人たちが主体的に働きやすい環境までつくる。

人材育成も、制度も、仕事の進め方も、オフィスも。

細かいパーツの仕分け現場においても、障害のある社員さんへの配慮であったり、「ちょこっとトレーニング」ができる場所など、現場のすみずみまで”社員に寄り添った現場設計”がされているところが、大変魅力的でした。

すべてが別々の施策ではなく、一つの考え方でつながっているように感じました。

 

“もっと良くしたい”を、会社の当たり前にする

今回の視察では、本当にたくさんの取り組みを教えていただきました。

一番心に残ったのは、制度の名前ではありません。

その一つひとつを10年以上続けながら、その時々の社員や組織に必要なものへと変え続けていることでした。

最初は笑顔をつくることから始まった研修も、現在では自己開示や他者尊重など、より深いコミュニケーションを考える内容へ。

表彰も、売上の大きさだけを見るものから、お客様への貢献やチームを巻き込んだプロセスを称えるものへと変化してきました。

会社が大切にしたいものが変われば、仕組みも変える。

そして、仕組みをつくったら終わりではなく、また社員の声を聞き、話し合い、さらに良くしていく。

「変革」という言葉からは、大きな決断や大胆な改革を想像することがあります。

でも、今回見せていただいた変革は、もっと日常の中にありました。

 

今日の仕事に、小さな違和感を見つけること。

誰かと話すことや、外へ出て学ぶこと。

一度でわからなければ、もう一度聞きに行くこと。

誰かが声を上げたら、ちゃんと返すこと。

 

そんな一つひとつの積み重ねが、10年後の会社をつくっていく。

今回の視察を終えて、改めてそう感じました。

そして何より素敵だったのは、みなさんが「私たちはもうできています」と語られていなかったことです。

今もなお、

「もっと良くするには、どうしたらいいだろう」

と問い続けている。

もしかすると「改善が根づく」とは、完璧な仕組みが完成することではなく、その問いをみんなで持ち続けられることなのかもしれません。

私たちも、今回いただいた学びを「素敵な会社だった」で終わらせるのではなく、それぞれの組織へ持ち帰りたいと思います。

私たちの会社では、社員の小さな声を拾えているだろうか。

社員が「もっと良くしたい」と思ったとき、その気持ちを受け止められる環境があるだろうか。

そして、自分たちの仕事の「当たり前」を、問い直し続けられているだろうか。

そんな問いまで持ち帰ることのできた、とても豊かな一日でした。

トヨタモビリティパーツ 茨城支社のみなさま、
長い時間をかけて積み重ねてこられた取り組みを、言葉だけではなく、実際の現場まで惜しみなく見せてくださり、本当にありがとうございました。

みなさまが10年以上かけて育ててこられたものを、私たちなりに丁寧に受け取り、また次の組織づくりへとつないでいきたいと思います。