“生きがい”の方程式を探しに
「なぜ手数料がかかるにも関わらず、人々はATMを利用してしまうのか」
思わず使ってしまう、買ってしまう……。身近にあふれるこうした心理には何か理屈があるはずだと、私は考えています。目には見えづらい需要と供給の仕組みを徹底的に分析し、お客様に還元できること。それが、コンサルタントという仕事の醍醐味です。
コンサルタントに惹かれたのは、マーケティングに興味を持ったのがきっかけでした。大学生の頃、甲子園球場で売り子のサポートをするバイトをしていたのですが、「売り子に人気の差が生まれること」を不思議に思ったんです。
肌寒くなり、ビールの売り上げが落ちる雨の日でも、人気の売り子のビールは売れる。推しの売り子を応援するため、一人では飲めないくらい多く注文するお客様がいる。そこにはやはり、目には見えなくても “数値化できるルール” が存在する気がしました。
売り子のサポートとして接客や売上アップのアドバイスも行なっていたのですが、売り子の経験がない私の言葉は誰にも聞いてもらえず……。自分を主語にしていては説得力に欠けると思い、人気の売り子を徹底的に分析しました。そうして成功例を主語にして話すと、すんなり聞き入れてもらえたんです。その過程はとてもやりがいがあり、バイト以外の時間でも頭を使ってしまうほど、楽しかったですね。
そして大学2年の夏。中小企業向け経営コンサルの大手企業である、船井総研へインターンに行きました。話を聞いていると、私が悩みながらたどり着いた「成功事例の分析をして、方法論を導き出す」というやり方が、なんと会社の価値観と共通しているとわかって。
その日から第一志望に決めていた船井総研。数年後、無事に内定をいただきました。
就職後はもちろん大変さもありましたが、売り子のサポートに没頭した大学の夏休みの延長のような楽しい日々でした。大学時代には解決しきれなかった謎を、苦しみながらも解けたときの爽快感は何にも代え難いものでしたね。
知識を得て、売り上げ向上など課題解決力も身につき、想像もしなかった大企業とお付き合いできたり、学会で講演させてもらう機会をもらったり。お客様への貢献を実感できる経験に恵まれたのも、大きな喜びでした。
充実した7年でしたが、時代の変化に伴って効率化が進められるようになると、少しずつ会社との方向性の違いを感じるようになりました。時間をかけたからこそ気づけた、あの達成感がもう得られないのかと思うと、寂しさを覚えたのです。
さらに、部下を20名ほど抱える立場になってから「自分らしいリーダー像」を考えたところ、メンバーの個性を知り「周りを活かす」というあり方が一番しっくりきました。
たとえ泥臭くても、身の回りの謎を追求し続けていたい。そして、お客様や周りの人の幸せをもっと探求してみたい。そう思い、船井総研でのキャリアに区切りをつけることにしたのです。
2023年。個人で会社を立ち上げるのと同時に、つむぎ株式会社(以下、つむぎ)へのジョインを決めました。つむぎでは、今関わりの深い葬儀業界のクライアント様や、社内に多いフリーランスのメンバーなど、個人事業では出会えないかもしれない、さまざまな人々と関われることに魅力を感じています。
今後の私のミッションは、「人々の生きがいを最大化する」ことです。得意の分析を活かし、その人らしさや会社の個性を伸ばしていく。それが働きがいを超えた “生きがいの支援” に繋がるのではないかと考えています。
実は少し前から、マーケティングより一歩踏み込んだ、人の心理や脳の仕組みにも関心が向いていました。エンゲージメントという言葉が最近多く使われるようになりましたが、具体的に数値化できないのか、向上させるにはどんな方法があるのか、まだまだ分析の余地が多く残されています。
私はやはり「本質」が知りたい。そのためにも「現象には必ず理由がある」……そんな前提から始めようと思っています。相対性理論を導き出したあのアインシュタインも、「宇宙は式で表せる」と信じたのが出発点だったはずだから。
これからもさまざまな企業や人々と出会い、まだ見ぬ法則性の探求を続けていきます。