言葉を通して、支える存在に
言葉に、恩返しがしたい。
心身ともに疲弊していたときに、助けてくれたのはいつも「言葉」でした。だからこそ、文章に携わることを通して誰かの役に立てたら、それは文章自体への恩返しにもなるのではと思うのです。
高校、大学時代は、家族と生活のためにアルバイトに明け暮れる日々。厳しい生活環境でもなんとかやっていけていることは自信に繋がったものの、学生生活を謳歌する周りとの差にだんだん心をすり減らしていったんです。
そんなときは大抵、誰かの言葉や文章を読みました。中でも、よしもとばななさんの「キッチン」は擦り切れるほど読んだものです。唯一の肉親だった祖母を亡くした主人公の話で、絶望から立ち直ろうと試行錯誤を繰り返す姿は生きる力をくれました。
社会人になり、仕事をする中で文章を書いて生きている人と出会う機会があったんです。文章に恩返しができるかもしれないと思い、まずは自分の経験を元に、大学生向けに自分の経験や生きるために必要なことなどを書き始めました。
実は、小学生の頃から物語を作ったり、仲間うちでブログを書いたりと、前々から文章で人を楽しませることに惹かれていたんです。だんだんと読んでくださる方が増え、少しずつ形になっていきました。
独立してからは、さまざまなジャンルの執筆だけでなく、コピーライティングや企画などにも携わるように。しかし、2019年に過労で倒れてしまったんです。それから視界にもやがかかるようになり、ある日起きたら、突然目が見えなくなっていました。
検査の結果、ベーチェット病であることが判明。ベーチェット病とは、指定難病の一つで、全身に炎症を起こす病気です。それからしばらくは周りの方に助けてもらって生活するのがやっと。働くなんて、あまりにも難しい状況でした。
社会復帰ができた現在も、ベーチェット病と共に生きていますが、難病になって実感したことが二つあります。
一つは、たくさんの人に支えられて生きているということ。生活はもちろん、仕事に関してもクライアントさんに事情を説明したところ、金銭面やスケジュール面で大きく助けていただきました。
もう一つは、今あるものを大切にしようということ。たくさんのものを失ったからこそ、当たり前の大切さが身に染みて理解できたから。これからは酸いも甘いも、人生のすべてを味わい尽くしたいと考えるようになりました。
だからこそ、つむぎ株式会社(以下、つむぎ)のVission(Vision×Mission)である「働くがやりがいに、そして人生を幸せに」という言葉に深く共感しています。
働いている人にとって、仕事は人生の大部分を占める時間。それに、どんなに嫌でも、働かなければ生活ができません。
でも、どうせ働くのなら、仕事が楽しいと思えた方がいいんじゃないかなって思うんです。何か一つでも楽しい部分が見つかれば人生が輝くかもしれない。だからつむぎで、ブランドブックを通して「やりがい」を見つけるきっかけづくりがしたいんです。
そのためにも編集者として、書き手が自分の良さを最大限に発揮できるコミュニケーションを意識しています。
お客様に対しては確認作業をしっかりとして、安心していただく。紡ぎ手(※)さんに対しては、フラットな関係性とその人らしさを大切にした編集を心がけています。書き手自身が気づいてない素敵な部分を見つけ、やりとりを通して相手に伝えられるのは、この仕事の好きな部分です。
たとえ難病と生きていても、こうして日々を楽しく、豊かに過ごしている。そんな私の生き方が、誰かの役に立てばいいなと思っています。それを体現するための手段の一つが、文章に携わることなんです。
年齢、性別、人種などでくくらず、困ったときに誰もが手を取り合えるような「やさしい社会」を目指して。少しでも「言葉」に恩返しができるように、文章を通して、関わる人たちを支える存在になりたいです。