「管理職が現場一筋でマネジメントに不慣れ」「後継幹部が育たない」こうした声は、産廃業界の中小企業でよく聞かれます。

人材不足、現場の高齢化、法改正対応など、課題が複雑化するなかで、現場力だけでは組織を維持・発展させることが難しくなっています。

本記事では、産廃業界における幹部育成の必要性と研修導入の進め方、具体的なテーマや成功事例を紹介し、「会社を支える人を育てる」ためのヒントを提供します。

「社長が現場に出続ける会社」は危ない──幹部不在が招くリスク

産業廃棄物業界における多くの中小企業では、管理職や幹部クラスが「現場出身者」で構成されていることが一般的です。現場経験が豊富であることは強みである一方で、組織全体を俯瞰して動かす「経営視点」や「マネジメントスキル」が不足しているという課題にもつながります。

現場依存の体制では、判断や管理、後進の育成といった重要な業務が属人化しやすく、誰かが抜けたときのダメージが大きくなります。また、現場対応の一つひとつが法令遵守や安全管理に直結するため、幹部クラスの判断ミスが企業リスクに発展することも少なくありません。

さらに、経営者の右腕となって組織を支える人材がいなければ、事業承継や組織拡大といった中長期的な成長は進みにくくなります。「社長が現場に入り続けている」「任せられる人がいない」という状態は、企業にとっても現場にとっても負荷の大きいものです。

だからこそ、幹部研修を通じて「現場と経営をつなぐ人材」を育てることは、将来の組織基盤をつくるための重要な取り組みなのです。

ただの“現場リーダー”で終わらせない──幹部に必要な3つの力

幹部を育成するにあたり、ただ「マネジメントを勉強してもらう」だけでは不十分です。特に産廃業界においては、現場力と経営力を橋渡しできる“中間管理層”としての実践力が求められます。そのため、研修で重点的に育てたい視点は以下の3つです。

1. リーダーシップとリーダーシップと人材育成力
幹部には、部下やチームをまとめ上げる統率力と、相手の話を聴く「傾聴力」、業務を伝える「説明力」が欠かせません。現場で後輩にどう教えるか、トラブル時にどう声をかけるかなど、日常の中で“人を育てる力”が求められます。

2. 業界知識と法令理解
産業廃棄物業界では、廃棄物処理法やマニフェスト制度、行政との関係など、特有のルールや責任が存在します。現場で起こる判断の多くが法的リスクに直結するため、幹部には正しい知識が必須です。

3. マネジメント力
安全・人・コストといった“経営の視点”と、現場での実行力をつなぐのが幹部の役割です。全体を見渡しながら課題を把握し、数字を意識しながら改善提案ができるようなマネジメント力が必要とされます。

これらの力をバランスよく育てることで、現場を回すだけではなく、会社全体を支える人材へと成長していくことができます。

「何を教えるか」が成果を決める──産廃業界に必要な幹部研修テーマ

幹部育成と一口に言っても、「何を教えるべきか?」が明確でなければ成果につながりません。特に産廃業界では、業界特有の法令や業務特性を踏まえた実践的なテーマ選定が重要です。以下は、研修の中で取り上げたい具体的なテーマ例です。

・法令順守と業界構造
廃掃法や委託契約の正しい理解、施設運営における注意点など。幹部が業界構造を理解することで、より広い視点から判断ができるようになります。

・理念浸透・部下面談・OJTスキル
会社の方針を伝える力、部下と定期的に対話する力、現場での実地教育力など、コミュニケーション面の強化が狙いです。

・抽象度の高い問題に対する取り組みの姿勢づくり
現場から育ってきた幹部層にとって、正解があるわけではない経営の課題、そこへの立ち向かい方は未知の領域です。研修の場を用意し、抽象度の高い問題への対応力を磨いていくと良いでしょう。

これらのテーマを組み合わせることで、「現場経験はあるが、経営は初めて」という幹部層でも、段階的に力をつけることが可能になります。

Group of business people meeting together to assess business profits.

「とりあえず始める」では失敗する──幹部研修5ステップ設計ガイド

幹部研修を効果的に導入するには、「とにかく始める」だけではなく、段階的な設計と現場との接続が不可欠です。以下の5つのステップをもとに、実施の流れを整理しておきましょう。

Step1|経営課題と研修目的の明確化
まず、「なぜ幹部研修をやるのか」を明確にします。たとえば「社長の業務負担を減らしたい」「安全指導を強化したい」「後継幹部を育てたい」など、目的によって研修内容やゴール設定が変わってきます。

Step2|対象者の選定
対象とするのは、現場の主任や責任者クラス、または将来の幹部候補となる中堅社員など。ポジションに関係なく、「今後任せていきたい人」を選ぶことがポイントです。

Step3|研修プログラムの設計
月1回・2時間の短時間研修でも十分です。忙しい現場に負担をかけず、継続的に学べる仕組みを設計しましょう。外部講師の活用や社内勉強会など、形式も柔軟に調整可能です。

Step4|現場との接続
研修内容が机上の空論で終わらないよう、実務とつなげる工夫が必要です。たとえば、「現場で実践してみる課題」を出す、研修テーマを現場の課題から選ぶなど、すぐに活かせる設計が重要です。

Step5|評価とフィードバック
研修の効果を高めるためには、振り返りとフィードバックも不可欠です。360度評価や1on1、簡単なレポート提出などを通じて、本人の変化を見える化し、継続的な成長を促します。

「忙しくて時間がない」「研修は意味ある?」──幹部育成の悩みに答えます

Q. 現場が忙しく、研修の時間が確保できません…
A. 月1回×2時間でもOK。継続と現場との接続がカギです。

Q. 幹部層が「研修なんて意味あるの?」と言ってきます…
A. 「教え方」や「説明力」「理念理解」は現場を支える要素です。必要性を丁寧に説明しましょう。

Q. 外部講師と社内研修、どちらが効果的?
A. 経営課題に応じて併用がおすすめ。最初は社内勉強会からでもOKです。

「誰を、どう育てる?」──幹部研修の進め方に悩んだらご相談ください

もし「どこから手をつけていいかわからない」「どんな制度がいいのか?」と感じられた場合は、ぜひお問い合わせをいただければと思います。中小企業の人事領域に対し豊富な知見を持つコンサルタントと、30分間無料でご相談が可能です。

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幹部研修は企業のステージや未来予想図、課題感にあわせ、構築していくことが重要です。つむぎではこれまで、数多くの幹部研修をご提供してきました。成功事例をまとめた記事をご紹介しますので、ぜひご一読ください。

<リーダー研修編>つむぎコンサルタントによる成功事例紹介【ライフサービス様】

幹部研修に関係する記事は下記にもまとめています。この機会にぜひご一読ください。

産業廃棄物業界の理念(VMV)は“作って終わり”ではない 社内に浸透させる5つの実践施策

未来をともに考える人材を育てる。産業廃棄物業界に幹部研修が必要な理由と育成の進め方

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「任せられる人がいない…」をなくす。幹部育成は未来への投資です


幹部研修は、“現場力”と“経営力”をつなぐ組織づくりの要です。

育成を先送りにすれば、将来的に「人がいない」「任せられない」リスクを抱え続けることになります。

まずは、小さな勉強会や面談設計から、幹部育成の第一歩を踏み出してみましょう。