「やっと採用できたと思ったら、3ヶ月以内に辞めてしまった」──そんな声は、産廃業界の現場から数多く聞こえてきます。
採用費をかけてもすぐに辞めてしまう。教育の手間がかかるのに戦力になる前に去ってしまう。このような状況が続くと、現場の負担は増え、採用コストも無駄になってしまいます。
人材不足が深刻化するなかで、今こそ重要なのが「定着」の仕組みです。
本記事では、産廃業界における離職の原因と、定着を実現するための具体的な施策・事例を紹介します。
「採用はゴールではなくスタート」──今こそ“定着”を見直すべき理由
これまでの採用活動では、「採ったら終わり」という考え方が一般的でした。しかし、少子高齢化が進み、人材の奪い合いが激化する現在、採用は“始まりに過ぎない”時代になりました。
実際、「求人を出しても1件も応募が来ない」「採用費をかけて面接しても、すぐに辞退される」といった声は、産業廃棄物業界の現場で珍しくありません。また、中途採用にかかるコストは1人あたり数十万円〜に及ぶこともあり、採用しても定着しなければ、経営資源を無駄にしてしまうことになります。
だからこそ、今求められているのは「定着」という視点です。入社後すぐに辞められてしまう状況を防ぐことで、現場は安定し、採用回数も減らせます。結果として、採用コストは削減され、生産性の向上にもつながる──つまり、定着施策は“攻めの経営戦略”でもあるのです。
辞めた本当の理由は?──産廃業界の“見えにくい離職要因”
人が辞める理由は「給与が安い」「仕事がきつい」といった表面的なものだけではありません。とくに産業廃棄物業界では、入社後の“心理的なギャップ”が定着を阻害する大きな要因になっています。
たとえば、「仕事内容が思っていたよりも過酷だった」「現場の衛生環境に驚いた」「チームの雰囲気になじめなかった」など、入社前にイメージしていた環境とのギャップによって離職してしまうケースが多く見られます。
また、教育体制の不足も深刻です。新しく入社した人が業務を教わることなく「現場に放置される」ような状態では、当然ながら不安やストレスが溜まり、「自分には無理だ」と感じてしまいます。
さらに、職場に“居場所”がないと感じる人も少なくありません。話しかけにくい雰囲気、相談できる相手がいない、成果や努力を認めてもらえない──そうした「孤立感」こそが、離職の引き金となっているのです。
「安心・納得・つながり」を支える、定着の3つの仕組み
人が定着する職場には、共通する3つの“設計”があります。
1つ目は、「初期オンボーディング」の設計です。
オンボーディングとは、入社直後に行う受け入れ体制のこと。入社から最初の1ヶ月は、社員にとって最も不安が大きい期間です。この期間に、職場案内や歓迎の声かけ、業務の流れの説明などを丁寧に行うことで、「ここで働けそうだ」と思ってもらえるかどうかが定着のカギとなります。
2つ目は、「育成と評価の仕組み」が整っていること。
人は「成長できている」「努力が報われている」と感じたときに、仕事への前向きな気持ちが生まれます。教育カリキュラムの明示や、ステップアップの目安を見える化することで、やる気の継続につながります。また、評価制度が整っていれば、処遇への納得感も高まり、離職を防ぐことができます。
3つ目は、「居場所づくり」です。
たとえば、月1回の1on1ミーティング、業務中のちょっとした雑談、頑張りを称える社内表彰など、小さなコミュニケーションの積み重ねによって、「ここに自分の居場所がある」と社員は感じるようになります。安心して働ける空気感をつくることは、定着において欠かせない要素です。
小さな工夫で大きく変わる!現場発・定着施策ベスト10
定着施策は、必ずしも大きな投資が必要なものではありません。むしろ、現場レベルで“できること”を一つずつ積み重ねていくことが、定着率の向上につながります。以下に、産廃業界の現場でもすぐに取り組める10の具体策をご紹介します。
- 入社初日の“歓迎セット”や職場案内
名札や作業着、メッセージカードを用意し、「ようこそ」という気持ちを伝えることで、第一印象が良くなります。 - 教育担当(メンター)制度の導入
先輩社員を教育係として配置することで、業務上の不安を気軽に相談できる環境が整います。 - 月1回の1on1ミーティング
上司と1対1で話す機会を設けることで、悩みの早期発見や関係構築につながります。 - 研修・教育カリキュラムの可視化
「何を、いつ学ぶか」を一覧化したマニュアルがあると、新人も安心して学ぶことができます。 - 成長ステップ表の作成
「できるようになったこと」が“見える化”されることで、達成感が生まれ、やる気が持続します。 - 朝礼・終礼での理念共有や安全確認
日常の中で会社の方向性を繰り返し伝えることで、「組織の一員である」という意識が高まります。 - 月1回の交流ランチやBBQ
業務とは別の場で話す時間が、チームの信頼関係を深めます。 - Value表彰やサンクスカード制度の導入
頑張りを“言葉”として見える形で称える仕組みが、職場の風通しを良くします。 - 社内報やLINEグループでの声かけ
日常的な情報発信や声かけで、「気にかけてもらっている」と感じてもらえます。 - 離職防止アンケートと退職面談の制度化
離職理由を把握し、改善点を洗い出すことで、今いる社員の定着にもつながります。
これらの取り組みは、すべて「人を大切にする文化をつくる」ことにつながります。定着率を高めるには、まずは身近なことから、できることから始めることが大切です。
「時間も人手もないけど…」現場の不安に答えるQ&A
Q. 定着施策はコストや手間がかかるのでは?
A. 小さな施策からでも始められます。1on1やマニュアル整備などは低コストでも効果があります。
Q. ベテラン社員が「甘やかすな」と反発します…
A. 定着=教育・安全・効率の土台です。経験者の知見を活かして協力してもらいましょう。
Q. 忙しい現場でも取り組める最低限の施策は?
A. 入社初日の職場案内、月1の面談、マニュアル整備などが効果的です。
「定着ってどう始めるの?」──無料相談で見つける第一歩
もし「どこから手をつけていいかわからない」「どんな制度がいいのか?」と感じられた場合は、ぜひお問い合わせをいただければと思います。中小企業の人事領域に対し豊富な知見を持つコンサルタントと、30分間無料でご相談が可能です。
効果のある定着支援を実現するには、社員の心に寄り添う姿勢が大切です。つむぎでは、仕組みとして「コーチング」を受けられるサービスを提供しています。担当者のお話は、定着支援を行ううえで参考となる情報が多くありますので、ぜひご確認ください。
定着施策に関係する記事は下記にもまとめています。この機会にぜひご一読ください。
「採る」から「残る」へ。定着は経営を変える打ち手です
採るだけでは人は残りません。定着こそ“攻めの経営施策”です。
離職を防ぐ仕組みがあれば、現場は安定し、採用コストも減らせます。
まずは「入社後1ヶ月」の体験を見直し、安心・つながり・成長を感じられる仕組みから整えていきましょう。