「理念なんてなくても会社は動いている」と思っていませんか？
ですが、採用がうまくいかない、社員が定着しない、組織に一体感がない……。これらの根本原因に“理念の不在”が関係していることは少なくありません。
特に人手不足と離職に悩む産廃業界では、「何のためにこの仕事をしているのか」を明文化し、社内外に伝えることが今後の成長と持続可能性に直結します。
本記事では、産廃業界におけるVMV（Vision／Mission／Value）の定義と役割、導入メリット、導入方法と事例を紹介します。
“ビジョン・ミッション・バリュー”って何？──理念が経営に果たす3つの役割とは
VMVとは、・Vision（ビジョン）・Mission（ミッション）・Value（バリュー）の略で、企業の在り方や行動の軸を定める“組織の心臓部”とも言える考え方です。
Vision（ビジョン）は、「その会社がどんな未来をつくっていくのか」という未来の姿を示します。この目標は社会的な貢献の意味を持つ場合が多いです。たとえば「資源循環を通じて、つくの世代のための社会を作る」といったものが挙げられます。その時点で考えられる最高の未来の姿が表現されます。
Mission（ミッション）は、「Vision（ビジョン）をどのようにな道筋で叶えていきたいのか」、「どんな在り方を目指すのか」という方向性を描きます。ミッションに描かれたものはある種の「使命」であり、そこに描かれたものを追求することでVisionが達成されます。
Value（バリュー）は、日々の行動や判断に共通する価値観を定めたものです。社員が何を大切にし、どう動くべきかを示す行動指針であり、社員一人一人が最も身近に感じることのできる理念ともいえます。
このVMVを明確に持つことで、経営者の判断だけでなく、採用・評価・育成など、あらゆる経営活動に“共通の基準”が生まれます。言い換えれば、VMVとは「組織を一つにする言語」であり、文化や方針を言葉で共有するためのツールなのです。
「なんのためにこの仕事をするのか？」──理念が産廃業界にこそ必要な理由
産業廃棄物業界は、社会のインフラとして不可欠な仕事を担っているにもかかわらず、その価値が十分に認知されていない業界でもあります。だからこそ、「何のためにこの仕事をしているのか」「この会社はどんな使命を担っているのか」を言葉にして発信する必要があります。
採用市場においても、応募者は給与や待遇だけでなく、「この会社に共感できるかどうか」で職場を選ぶ傾向が強まっています。理念を明確に打ち出すことで、自社の価値観に共感した人材を惹きつけやすくなり、入社後のミスマッチも減らすことができます。
また、現場のマネジメントがベテラン社員の経験や感覚に頼りがちなこの業界では、組織全体で“人を育てる”体制への転換が急務です。その際の「共通の教育軸」としても、理念の存在は不可欠です。
つまり理念は、外向きのメッセージであると同時に、内向きの「行動と育成の指針」としても、産廃業界にとって強力な武器となります。
「何を大事にしている会社かわからない」──理念がないことで起きる5つの問題
理念がない、またはあっても機能していない会社では、さまざまな問題が起きやすくなります。
まず、経営者と社員の間で「大切にしていること」が共有されておらず、判断基準がバラバラになります。現場ごとに方針や考え方が異なり、統一感がなくなることで、組織としての力が分散してしまいます。
また、採用の場面では、「理念がない＝何を大切にしている会社かわからない」と受け取られ、入社後に「思っていた会社と違った」と感じるミスマッチが起きがちです。これは早期離職の原因にもなります。
現場では、「やらされ感」が強くなり、自発的な行動や仕事への誇りが育ちにくくなります。社員が「なぜこの仕事をしているのか」がわからないままでは、成長や定着にもつながりません。
さらに、マネジメントが属人的になり、「あの上司の判断はこうだけど、別の人は違う」といったブレが生じることで、社員の混乱や不信感を招くこともあります。
「理念がある会社はなぜ強いのか？」──採用・定着・経営に与えるポジティブな変化
理念をしっかりと定め、それを組織内で活用できるようになると、企業のあらゆる場面に好影響が現れます。
まず、社員にとっては、仕事の目的意識や判断基準が明確になり、自ら考えて行動する“自律性”が育ちます。指示を待つのではなく、自分の中に判断軸があることで、やりがいや成長実感も生まれやすくなります。
採用においても、理念に共感した人が応募してくるため、入社後のギャップが小さくなり、定着率の向上が期待できます。採用時点で価値観のマッチングができていると、チームとしての一体感もつくりやすくなります。
経営の面では、VMVがあることで、意思決定や中期戦略に一貫性が生まれます。「この方針は理念に照らしてどうか？」という観点が持てるようになり、経営のブレや迷いが減ります。特に事業承継や組織拡大の際には、VMVが“企業らしさ”を守る軸として機能します。
「つくって終わり」にしない──理念を“語り、行動できるようにするために
理念はつくって終わりではありません。社内に根づかせ、「社員一人ひとりが語り、行動できる状態」をつくることが重要です。そのためには、以下のような地道な取り組みが効果的です。
まずは、経営者自らが理念を繰り返し伝えることが第一歩です。朝礼や会議、1on1の場など、日常のあらゆるタイミングで繰り返し言葉にすることで、社員の記憶と感情に刷り込まれていきます。
次に、理念を“見える化”する工夫も大切です。冊子やポスター、採用資料に記載することで、誰もがいつでも目にすることができるようになります。社員が自然に口に出せるようになるには、日常的な接触機会が必要です。
理念浸透施策をまとめた記事には、その他の施策も記載しております。ぜひご確認ください。
理念浸透記事
「理念って本当に必要？」に答えます──中小企業の経営者が抱きやすい疑問Q&A
Q. 理念は大企業だけが持つものでしょうか？
A. いいえ。中小企業こそ、組織の土台となる“共通言語”が必要です。
Q. 理念が抽象的になってしまいます…
A. 最初は“社長の想い”から始めてOK。社員と磨き上げるプロセスが重要です。
Q. 押し付けと感じられませんか？
A. 一方的に“掲げる”のではなく、対話の中で“共通する考え”を見つけていくのがベストです。
「理念を作りたい」「浸透させたい」方へ──支援プログラムと無料相談のご案内
もし「どこから手をつけていいかわからない」「どんな施策がいいのか？」と感じられた場合は、ぜひお問い合わせをいただければと思います。中小企業の人事領域に対し豊富な知見を持つコンサルタントと、30分間無料でご相談が可能です。
またつむぎでは、理念策定から浸透までをご支援する「やりがい強化プログラム」をご用意しております。どんな内容か？についても触れていますので、自社で理念関係の施策に取り組まれる予定の方にとってもご参考になるかと思います。
理念策定に関係する記事は下記にもまとめています。この機会にぜひご一読ください。
理念は“人と組織をつなぐ共通言語”──採用・定着・事業成長の起点はここから
理念は「人と組織の共通言語」であり、産廃業界にとっては「社会的意義を伝えるメッセージ」でもあります。
自社の仕事に誇りを持ち、社員が共感できる“軸”をつくることが、採用・定着・成長の第一歩になります。
まずは、自社の想いを言葉にするところから、理念づくりを始めてみましょう。
