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当社が主催する、『人財』を自社の強みとしている企業が集うコミュニティ「人・組織創りラボ」。
同コミュニティでは年に1〜2回ほど、その模範となる企業に視察を行っています。
今回訪問したのは、高知県高知市に本社を置くミタニ建設工業株式会社さん。土木・建築・舗装を担う総合建設業として地域インフラを支える一方で、「永続する未来をつくる」を理念に掲げ、採用や人づくり、地域共創まで含めた新しい挑戦を続けている企業です。
今回の視察には、つむぎ株式会社のメンバーであり、広報コンサルタントでもある川合が終日参加しました。
当日は、ミタニ建設工業株式会社様の取り組みや現場の空気を実際に見聞きしながら、撮影・記録も担当。本レポートは、当日の視察に同行した川合が、広報の視点から執筆しています。
今回はその一環として、取締役の三谷様、取締役・人事部長の中島様のお話をはじめ、組織づくりや採用に対する考え方、地域にひらかれた取り組みまで、幅広く学ばせていただきました。
理念を掲げるだけでなく、それを実際の文化として根づかせている同社の現在地とは。
視察当日の様子をレポートします。

会社プロフィール
ミタニ建設工業株式会社
高知県高知市に本社を置く総合建設会社。土木・建築・舗装を通じて地域の暮らしを支える一方、「永続する未来をつくる」を理念に掲げ、採用・育成・地域共創を一体で進めながら、新しい価値づくりに挑戦している企業です。
まず感じたのは、「いい会社」ではなく「伝わる会社」だということ
今回の視察で強く感じたのは、ミタニ建設工業さんが単に制度の整った会社でも、ただ採用のうまい会社だけということではなく、
この会社は、自分たちが何者で、何を目指していて、なぜそれをやるのかが、すごくクリアに“伝わる”会社でした。
これはとても大きなことだと思います。
どれだけ良い取り組みをしていても、社内でしか意味づけされていなければ、魅力は外に伝わりません。逆に、理念・採用・育成・地域との関わりが一本のストーリーでつながっている会社は、言葉にした瞬間に強い。
ミタニ建設工業さんには、その“語れる強さ”がありました。
当日は、三谷さんのプレゼンテーションから始まり、中島さんによる採用と育成の実践共有、勉強会や採用ブースの見学、最後には参加企業同士でのシェアタイムまで、非常に濃密なプログラムが組まれていました。
でも、どの場面を切り取っても共通していたのは、表面的な施策の話ではなく、「この会社は何のために存在するのか」という問いが根底に流れていたことでした。


「十兎追う者しか十兎を得ず」三谷取締役の言葉に、会社の輪郭がにじんでいた
三谷さんのお話の中で、特に印象に残った言葉があります。
「十兎追う者しか十兎を得ず」
この一言に、ミタニ建設工業さんらしさが凝縮されているように感じました。
土木・建築・舗装という本業にしっかり向き合いながら、採用にも、人づくりにも、地域との関わりにも、新しい事業にも挑戦していく。
ひとつに絞るのではなく、複数のテーマを同時に本気で追いかける姿勢です。
建設業というと、どうしても“現場の仕事”という見え方をされがちです。
けれどミタニ建設工業さんは、それを「地域を支える仕事」として語るだけでは終わらせていませんでした。
安全、品質、工期、環境、原価。
ものづくりに必要な多くの要素を高いレベルで成立させながら、その先にある社会や人の暮らしまで視野に入れている。
その話しぶりからも、会社が見ているスケールの大きさが伝わってきました。
そして印象的だったのが、海外人材採用についてのお話です。
「安い賃金で来てもらう」という発想ではなく、5年後、10年後も一緒に働き、共に未来をつくっていける人材を迎えたいという視点で語られていました。
社員ひとりひとりと、どう歩んでいく会社か。
そこには、その会社の思想がいちばん表れる、と改めて感じました。

危機を経たからこそ、理念が飾りではなくなった
今回のお話で、言葉の重みを感じた理由のひとつは、ミタニ建設工業さんが過去の苦しい時期についても率直に語ってくださったことでした。
会社として逆風にさらされ、多くの社員が不安を抱え、離職も経験した。
その出来事を経て、三谷さんは「会社を守るとは何か」を根本から問い直されたそうです。
売上なのか。
利益なのか。
社員なのか。
その家族なのか。
この問いを経てたどり着いたのが、「永続する未来をつくる」という考え方であり、
「建設業を進化させ、日本を変えていく」という存在意義でした。
企業理念は、整えること自体はできます。
けれど、本当に伝わる理念になるのは、過去の痛みや葛藤を通ってきた言葉が必要。
だからミタニ建設工業さんの理念は、きれいに見せるためのものではなく、会社の意思として伝わってくる。それが、話を聞く側の心に残る理由なのだと思います。

採用の話なのに、会社のブランディングそのものを見ているようだった
続いて伺った、ミタニ工業株式会社の取締役・人事部長である中島さんのお話も、とても印象的でした。
入社1年目から採用担当として大きな役割を担い、「理念で人を採用してほしい」と社長から託されていた中島さん。当時は新卒離職率が50%を超え、社内にも「この会社に入ってよかったのだろうか」と揺らぐ空気があったといいます。
その中で中島さんが決めたのは、“幸せに働ける会社を、まずは自分がつくる”ということでした。
この言葉に、私はとても心を動かされました。
採用改善というと、媒体、打ち出し、フロー設計といった施策に目が向きがちです。もちろんそれも大事です。でも、ミタニ建設工業さんが取り組んでいたのは、そのもっと手前にある、「何を基準に人と出会うのか」という問いでした。
評価型採用、体験型採用、対話型採用。
そして理念共感型採用へ。
この変化は、採用手法の進化であると同時に、企業の自己理解が深まっていったプロセスでもあるように感じます。
つまり、自社の魅力をどう伝えるか以前に、
自分たちはどんな人と未来をつくりたいのかを、きちんと言語化してきたということ。
これはまさに、採用広報であり、企業ブランディングそのものでした。


「10年後、ミタニにいたらどうなっていると思う?」その問いが、会社の魅力を“自分ごと”にしていた
今回、特に秀逸だと感じたのが、同会場で社内開催されていた“未来創造ワーク”のお話でした。
「10年後、ミタニにいたらどうなっていると思う?」
この問いに対して、各グループがディスカッションして、発表をするといったワーク。
採用において、会社の魅力を伝えることは大切です。でも本当に人の心が動くのは、その魅力が“自分にとってどんな意味を持つか”まで見えたとき。
ミタニ建設工業さんの採用は、まさにそこを設計していました。
仕事内容の説明だけでは終わらない。
現場体験だけでも終わらない。
キャリアの話だけでも終わらない。
その先で、「ここで働くことが、自分の未来にどうつながるのか」を考えさせる。
保護者や友人に向けて入社理由をプレゼンし、推薦書を書いてもらう。
人生設計書をもとにインターンシップを組み立てる。
内定承諾者へ、社長や社員からメッセージを贈る。
これらは単なるユニーク施策ではなく、“会社の魅力を、本人の人生と接続する広報設計”なのだと思いました。
採用広報が強い会社は、発信が上手い会社ではなく、 相手の未来の中に自社をちゃんと置ける会社なのかもしれません。


離職率0%の背景にあったのは、「制度」より「関係性」の思想だった
離職率改善の取り組みについても、非常に学びがありました。
30代社員が全体の4%しかいないという危機感の中で立ち上がった社員コーチ養成チーム。ここで行われていたのは、ルールの追加や制度改変だけではなく、日々の関係性を整えるための実践でした。
ありがとうワーク、ソーシャルスタイル診断、個別コーチング、レコグニションMOVIE、学びの全社共有などなど、ひとつひとつは地道です。
でも、こうした取り組みこそが、会社の文化をつくるのだと思います。
広報の仕事をしていると、どうしても“外への発信”に目が向きます。 けれど、本当に強い企業広報は、社内にある言葉と関係性が整っていてこそ成り立つものです。
ミタニ建設工業さんは、社外に見せるための取り組みをしているのではなく、社内に本気で向き合った結果、それ自体が魅力として外に伝わる状態になっている。ここが、本当に強い。
2023年に離職率0%という結果が出たこともすごいですが、それ以上に、そこに至るまでの思想の積み重ねに説得力がありました。


建設会社が、地域の自己肯定感までつくろうとしていた
さらに胸を打たれたのが、地域コミュニティ創生の取り組みです。奈半利町で進める挑戦や、廃校になった小学校を活用した場づくり。ゲーム感覚の体験設計になっているからこそ、子どもや地域住民を巻き込みやすいプロジェクトの実現。
これらを見て感じたのは、ミタニ建設工業さんは、道路や建物だけをつくっている会社ではないということでした。
人のつながりや、地域の希望までつくろうとしている。
採用も、人づくりも、地域との関わりも、すべてが分断されずにつながっている。
だからこそ、この会社のストーリーは厚みを持つのだと思います。
「新しいカタチは高知から」
その言葉に、ちゃんと現実味がありました。
地方発の企業が、地域の未来のつくり方そのものを更新している。
そんな熱量を、現場で確かに感じました。


つむぎとして、この視察から持ち帰りたいこと
最後のシェアタイムでは、各社が学びや気づき、自社でチャレンジしたいことを言葉にして持ち帰る時間がありました。
視察は、“すごい会社を見に行く場”ではなく、自分たちの会社に置き換えて考える場であることを、あらためて実感しました。
今回、ミタニ建設工業さんから学んだのは、採用ノウハウや制度設計の話だけではありません。
理念をつくること。
それを社内に浸透させること。
人の幸せと会社の未来を両立させようとすること。
そして、その挑戦をちゃんと社会に伝わる形にしていくこと。
広報の視点で見れば、ミタニ建設工業さんの強さは、“いい取り組みがあること”ではなく、“それらが一本の物語として成立していること”にあると感じます。
企業の魅力は、バラバラの実績では伝わらない。
理念、採用、育成、地域との関係、そのすべてがつながったときに、初めて「この会社、素敵だな」が生まれる。今回の視察は、まさにそれを体感する時間でした。

すごかった、で終わらせたくない会社だった
ミタニ建設工業さんは、採用に本気で、人づくりに時間をかける会社であり、何より、理念をちゃんと生きた言葉にしている会社でした。
でも、今回の視察を通じて感じたのは、それだけではありません。この会社は、広報されるべき魅力をたくさん持っている会社だということです。
苦しい時期を経て、それでも理念を立て直したこと。
採用を入口に、人の人生と会社の未来を重ねようとしていること。
離職率の改善を、関係性の再設計から実現してきたこと。
地域の未来にまで踏み込んで、新しい価値をつくろうとしていること。
どれも、今の時代において強い発信テーマになりうるものばかりです。
そしてそれは、見せ方だけでつくられた魅力ではなく、実践から生まれている魅力だからこそ、強く、人の心に残るのだと思います。
建設業を進化させ、日本を変えていく。
その言葉が、スローガンではなく意志として響いた一日でした。
ミタニ建設工業のみなさま、貴重な学びの機会を、本当にありがとうございました。

