音楽と暮らす日々に、言葉の花を
「音楽を食べながら、生きていきたい」
そんな暮らしを守るために見つけたのが、 “ライター” という選択肢でした。
「なりたい職業=好きなこと」だと考えていた小学生の頃。歌うのも音楽を聴くのも好きだった私は、将来の夢を書く欄に必ず “歌手” と書いていました。高校生になり、念願の軽音部に入ってからは音楽三昧の日々。やる気いっぱいのバンド仲間に恵まれ、大会に出場したり、CDを作ったりと楽しい青春のひとときを過ごしました。
卒業後はアルバイトをしながら音楽を続ける道へ。しかし、学生ではなくなった途端、自分でこれからの道を用意しなければならないことに不安を感じるようになりました。また、「普通はこうあるべきだ」という価値観をいろんな人から押し付けられ、自分を否定されたような気分になる経験も重なったんです。
周りの人の真意まで疑うようになり、そんな自分が嫌になり、生きがいだった音楽を聴けなくなってしまいました。自分で作った曲ですら愛せない……そんなとき支えになったのが、同じように音楽で悩んでいた高校時代のバンド仲間の一人です。
音楽をやっている理由をじっくりと話していくうちに、有名になるためではなく、ただ好きだからやっているという前提を思い出しました。「音楽を、そして作った歌を、まずは好きでいたい」。そんな共通の想いを持って、友人と共に再び音楽と向き合い始めました。
私にとって音楽は、生きる術なんです。生きるために食事や仕事が必要なのと同じで、私には音楽が必要でした。そして2022年には、憧れだったオリジナル曲の配信リリースに3ヶ月連続で挑戦。音楽を心地よく続けていく準備が整ってきたんです。
「生涯、音楽と暮らしていくためには、仕事に音楽の要素を取り入れていかないと」
そう思えるようになったときにはもう、5年勤めたバイト先を辞める決意をしていました。
その後、音楽にも繋がる第2の仕事を考えた際、作詞が好きなこと、常に深く考え事をしていることから、言葉に関わる仕事がしたいと思うようになりました。該当する仕事を探しているとき、高校時代の知り合いであり、つむぎ株式会社(以下、つむぎ)で現在編集者をしている小泉京花(以下、京花さん)さんが頭に浮かんだんです。
そして、京花さんにどうやってライターになったのか、今どんな働き方をしているのかを聞きに行った日。どの話も私にぴったり合っている気がして、「ライターしかない!」という直感の答え合わせをしているようでした。また、ライターなら5年くらい続けたとき、音楽と良い形で交わりそうな予感がしたんです。
それから、京花さんの紹介でつむぎに巡り会いました。
つむぎでブランドブックに携わってから、まず最初に驚いたのはインタビュイーであるお客様の仕事への熱い想いです。これまで私は仕事とやりたいこと(=音楽)を別で考えていたのですが、こんなにもやりがいを持って仕事をしている人がいるなんて衝撃でした。
ブランドブックの執筆では、胸が熱くなる瞬間にたくさん出会えます。お客様の強い想いに応えられるくらい、考え抜いて言葉を紡いでいく。そんな心のこもったやりとりは、「こんなに楽しく仕事して良いんだろうか」と思ってしまうほど幸せな時間です。
もしかしたら本当は、「なりたいもの」なんてないのかもしれません。何かになるより、そのままの自分や人を深く知りたい。新しく構築するより、ひも解いていく時間が好きなんです。だからこそもっと “言葉” を磨いていきたい。
歌に助けられてきた人間だからこそ、私が提供できるのはやはり言葉だと思うのです。深く人の心に届き、お客様に「この言葉だ!」と喜んでいただけるように、これからも模索し続けていきます。
今、私にはつむぎという大地がある。たくさん耕して、愛情をたっぷり注いで、いつか音楽と言葉を交差させた素敵な花を咲かせたいです。