「成長と貢献」という考え方をベースに、一人ひとりの価値観を大切にしながら、社会に貢献できる組織を実現するGCストーリー株式会社。2005年に西坂 勇人様が創業し、現在も「幸福な組織の形」について試行錯誤しています。
2019年にはホワイト企業大賞を受賞、2021年・2022年にはストレスチェック(100人以下部門)で全国1位を獲得し、一人ひとりの幸福を実現。そんなGCストーリーを創業された西坂様に、フラットな組織になるまでの経緯や、今後の展望を伺いました。
「人はなぜ生きるのか」疑問を抱いていた学生時代
––西坂様はどのような学生時代を過ごされたのでしょうか?
私は学生時代から「生き方」「幸福」「人間」に興味がありました。お金を稼ぐことよりも、「どう生きたら良いのか」を考えていたのです。しかし、自分の周りの学生は「生き方」と「本当の動機」が連動していない気がしていました。
たとえば、周りの友達は女の子にモテるためにバンドをしたり、親が会社を経営しているから自分も勉強をしてみたり。そのような生き方に違和感を抱いていました。
しかし、「生きる意味」にはたどり着けないまま学生時代を終えました。
創業のはじまりは、就職先の存在価値を守るため
––創業するまでの経緯を教えてください。
当時の日本は資本主義の考えが色濃く表れており、「年収1000万だからすごい」「起業したから偉い」などの風潮がありました。会社員として実績とスキルを身に付けたら、より条件の良い会社に引き抜きされることもあります。しかし、それは自分が売買されているようで違和感を感じました。
また、出世や競争に注力した結果、最終的に起業する流れがありましたが、単にお金を儲けることが目的の経営に意味を感じなかったのです。しかし、大学卒業後に就職する以外の選択肢が無かった私は、「生きることは、働いてお金を稼ぐことなのか?」と疑問を感じたまま、友達のお父さんが経営していた看板商社に就職しました。
看板商社に就職した理由は、大企業の歯車になるよりも、小さな会社のほうが、自分の生き方に合っているような気がしたからです。
看板商社では、看板屋さん向けの材料販売をしていました。しかし、2000年にインターネットが普及し始め、商社の存在価値が薄くなるのではないかと危機感を感じたのです。そこで、商社の代わりになるBtoBプラットフォームを作りたいと思い、新規事業を始めることにしました。
当初は社内ベンチャーとして始めるつもりでしたが、紆余曲折あって独立することに。これが創業のはじまりです。
人生の目的は『成長と貢献』
––創業してからどのような組織論にたどり着いたのでしょうか?
会社を設立してから数年はお金に頓着がなく、収益が上がっていなくても気にしていませんでした。私は27歳で結婚し子どもがいましたが、29歳で起業し3年間収入がなくても気にならなかったんです。
しかし、あるとき社員が「友達はもっと給料をもらっていて羨ましい」と泣き始めてしまったんです。このとき、「人はお金がないと不安になるんだ」と気付き、売上が立つビジネスモデルを考え始めました。
私はより一層経営のノウハウを身に付けるべく、大前研一氏のビジネススクールに参加。そこで多くの人との巡り合わせがあり、偶然にも「人はなぜ生きるのか」という問いの答えに辿り着きました。
その答えが、『人間の究極の目的は成長と貢献である』です。
学生時代から解決できていなかった問いの答えが起業3年目で明確になり、それからは非常に生きやすくなりました。そして、「貢献を目的に会社を成長させればいい」と気付いた瞬間から、目的に向かって突き進むことができたのです。
そして2005年に会社を東京に移転し、さらにVCから資金調達をし、会社としてどんどん成長していきました。
『成長と貢献』はすぐに社内に浸透した
––西坂様は創業後に「生きる意味の答え」にたどり着きましたが、どのように社内に浸透させたのでしょうか?
『成長と貢献』は自分の生き方として腹落ちしましたが、すぐに組織全体に浸透させようとは思いませんでした。なぜなら、これまでの経営方針や自分のキャラクターにギャップがあると感じたからです。
しかし、新卒採用の際に学生に話してみたところ、みなさん目をキラキラさせながら聞いてくれたのです。嬉しくなった私は、多くの学生に『成長と貢献』について話す機会を増やしました。すると、学生が他の社員と面接するときに、社員に対して「成長と貢献に共感しました!」と言ってくれるようになったんです。
何も知らない社員が「成長と貢献とはどういうことですか?」と私に聞いてくるようになったため、この思想を組織に浸透せざるを得なくなりました。その結果、多くの社員が「成長と貢献」に共感してくれたため、組織としての一体感が増したのです。
このような過程を経て、2009年度から約11年間急成長することができました。
一人ひとりがパーソナルミッションを掲げる組織へ
––事業を拡大するまでの経緯を教えてください。
業績は順調に伸びていきましたが、社員が増えたことで経営の難易度は上がってきました。そこで出会ったのが、稲盛和夫氏の「利他主義」という考え方。
これまで会社を大きくするために尽力してきましたが、「成長と貢献」という軸に立ち戻った際、看板業界で上場したいわけではないと気付いたのです。それから稲盛さんの思考をインプットしていくうちに、自分は「事業」ではなく「組織」に興味があると気が付きました。
高校野球に例えると、「優勝するために良いチームを作る」のではなく「いいチームだから優勝できた」というように、良い組織が出来上がった後に、結果として良いものが生まれるという順序が適切なのです。そのため、まずは会社に集まってくれた社員を幸せにすることが重要だと考えました。
では、社員一人ひとりの幸福とはなにか……と思考しているときに出会ったのが、「天命」という考え方です。簡単に説明すると、人にはそれぞれの役割があります。これを「天命」と呼びますが、天命を見つけることこそが「成長と貢献」に繋がると気付いたのです。
弊社は、社員一人ひとりがパーソナルミッション(天命)を持つことを大切にしようと決めました。しかし、これを実現するには看板事業だけでは難しいと考え、積極的に新規事業開発に取り組むことになったのです。
そこで、役員全員に新規事業にチャレンジしてもらいました。たくさんの新規事業を立ち上げたため、もちろん失敗した事業もたくさんあります。しかし、現在も継続している事業も複数存在しており、一人ひとりがパーソナルミッションを全うしているのではないでしょうか。
私たちはこのように事業を作り出してきたため、「GCストーリーは何屋さんですか?」と聞かれると少々回答に困ります。しかし、そもそも事業は組織ありきだと考えていますので、「何屋さんなのか」という思想自体が古いのではないかと思っています。
一人ひとりの価値観を大切にする「自律共創型組織」
––組織作りをするうえで、どのようなことを大切にしていますか?
経営は「論語と算盤」のバランスが非常に大切です。GCストーリーでは、論語とは、発達心理学の一分野『成人発達理論』を土台にした、人々の意識変容の促進のこと。算盤とは、数字と主体的なアクションを繋げる仕組みや文化の醸成『自律経営システム』の構築のこと。
論語を「社員のパーソナルミッションを活かす意識」にするのであれば、算盤側もそれに合わせて再設計する必要があります。そこで、実験的にさまざまな取り組みをし続けた結果、「組織のパーパスに向かって社員一人ひとりが自律し自走し、共に組織を創る」会社へと変化しました。弊社ではこのような組織を「自律共創型組織」と呼んでいます。
自律とは、プロフェッショナルが集まって、分散的に会社をよりよい方向に導くイメージがあるかもしれません。しかし、弊社は最初から自律を求めているわけではなく、社員がお互いを家族のように慈しむ「家族全員自律スタイル」というエッセンスも強く存在しています。そのため、丁寧な成長支援をしつつ、全員が自律した人材になることを目指しているのです。
「収益・事業の発展と、幸せな組織づくりを同時に実現することで、世界のモデルになる」の実現
––最後に、今後の展望を教えてください。
弊社のビジョンである「収益・事業の発展と、幸せな組織づくりを同時に実現することで、世界のモデルになる」を実現することです。
現在日本は資本主義という構造によって、目には見えない大切なものが失われている感覚があります。例えば、「一人ひとりがパーソナルミッションを持って生きること」などです。資本主義の中にある株式会社という構造にも欠陥があるのではないでしょうか。そのため、若者がやる気を失ったり、停滞感を感じたりと、様々な課題が生まれているのでしょう。
そんな組織が、GCストーリーの思想を1つのビジネスモデルとして取り入れ、真似してくれることによって、世の中にポジティブな影響を与えてくれる。それが派生して良い組織になる会社が増える。つまり、GCストーリーが「世界に解決策を提示し、良い会社を増やすこと」が、弊社の目指す未来です。