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京都府京都市で、学校や学習塾で使用する教材の執筆・校正・編集・組版・印刷を行う株式会社かえでプロダクション。学習塾や教材の出版社での経験を活かし、2009年に羽根 大介様が創業しました。

『編集技術で過去と未来をつなぐ』をコンセプトとし、社員が働きたいと思える会社を実現させた羽根様。大切にしている想いや、今後の目標を語っていただきました。

学習塾と出版社での経験を活かし、学習用教材の編集プロダクションを立ち上げた

−−創業までの経緯を教えてください

かえでプロダクションを創業するまでは、学習塾や教材制作を行う出版社など、教育に関わる会社で働いていました。大学では教育学部に在籍しており、人の成長に携わりたいと考えていたのです。

学習塾では新規開校校舎の教室長を任せてもらい、本社に次ぐ規模にまで成長させることに成功。塾講師はやりがいのある仕事でしたが、あるとき参加した「塾用教材の展示会」で転機が訪れます。

展示会で初めて「教材を制作する出版社」の存在を知り、自分も「出版」という面で教育に携わりたいと考えるようになったのです。そして、非準拠系の塾用教材で有名な出版社に転職。

転職先の出版社では、小中学生向けの教材でヒット作を生み出し、編集長に抜擢していただきました。しかし、出版社での経験を積むにつれて「もっと多くの企業と関わり、様々な視点から編集技術を高めたい」と思うようになり、自ら“教材に特化した編集プロダクション”を立ち上げたのです。

若者が働きやすい会社作りをした結果、求人倍率が100倍以上に

かえでプロダクション
−−創業してから大変だったことはありますか?

苦労したのは「人」ですね。私は経営経験がない状態で創業をしたため、人材を採用するノウハウがありませんでした。ただ、編集プロダクションを立ち上げたからには、外部スタッフをどれだけ採用できるかが重要だったのです。

しかし、当時は売り手市場ということもあり、初めは求人を出してもなかなか人が集まりませんでした。しかし、若い世代の方々に入社してほしいという想いで試行錯誤していた結果、なんと求人倍率が100倍以上に。

私は会社員時代、ボーナスや残業代をもらったことがありません。だからこそ「自分だったらどんな会社で働きたいか」を日々考え、実行しています。例えば、育児手当制度を導入したり、半年に一度の昇給の機会を作ったり。

さらには、フリードリンクの自動販売機も設置しています。中小企業で無料の自動販売機を常設した企業は、おそらく弊社が日本初でしょう。「会社に行けば美味しいドリンクが飲めて、ちょっとした軽食も食べられる」。些細なことですが、少しでも働きやすいと感じてもらえる取り組みを心がけています。そして何よりも、社員にとって会社が安心できる居場所になってくれたら嬉しいですね。

社員への信用が社員自身の成長に繋がる

かえでプロダクション
−−人材を育てるために、羽根様が大切にしていることを教えてください。

弊社は社員同士のチームワークを大切にしています。仕事を長く続けるモチベーションは仕事のやりがいだけでなく、社員同士の繋がりが非常に重要だと考えているからです。そのため、同期や仲間と一体感を持って働ける環境作りを徹底しています。

また、私は社員に対し、制作に関する口出しをしないよう心がけています。自分自身たくさんの失敗をしてきましたが、遠回りしたからこそ気付くことが多かったのです。ですから、まずは社員自身が悩み、それでも答えが出ない場合のみ相談してもらうようにしています。その結果、迷った場合は自ら試行錯誤し、自分の仕事に責任を持つ社員ばかりになりました。

ただ、私は社員に急成長を求めているわけではありません。人は一瞬で成長するわけではないため、ゆっくりと時間をかけて育ってくれたら良いと思っています。「分からないことが分かるようになる」だけでも成長に繋がりますし、この業界ではそれが非常に大切。遠慮せずに失敗できる環境で、着実に編集技術を身に付けてもらえたら嬉しいです。

過去に身に付けた編集技術を未来に繋げたい

−−トップメッセージの『編集技術で過去と未来をつなぐ』には、どのような意味を込められたのでしょうか?

「編集の技術を惜しみなく社員に伝え、未来に繋げたい」という想いを込めました。編集プロダクション業界は個人で活躍する方が多く、仕事を取られないために、身に付けた技術を自分の中だけに留めておく風潮があります。

しかし、教材の編集はニッチな業界であり、大企業が参入しては去っているのが事実。教材編集の世界では「4年経験を積んで一人前」と言われていますが、そう簡単な話ではありません。ですので、過去に身に付けた技術を次世代に繋げることが非常に大事だと考えています。

さらに、新入社員が出社した初日には「次の新人を育てよう」と話しているんです。新入社員だと思っているうちに、すぐに先輩になる日がくるので。このように編集の技術を次世代に伝え続け、若い人材が教材の編プロとして活躍してくれたら嬉しいですね。

日本の教育を海外に広げたい

−−今後の展望を教えてください。

まずは教材の編集プロダクションの中でも、最も規模の大きい会社に成長させることです。ただ、弊社は慌てず騒がず、時間をかけて着実に育ってきた会社ですので、自分たちのペースで進んでいきたいですね。

そして何よりも、将来的には日本の教育を海外に広めたいと考えています。

日本の公教育は遅れていると言われている一方、海外進出を果たす学習塾が増加しているのも真実。私は日本のみなさんに「日本の教育は世界に誇れるものだ」と自覚してほしいのです。時間はかかるかもしれませんが、海外でも通用する教育であることを発信し、日本の教育に寄り添い続けます。