港製器工業株式会社
港製器工業株式会社は、大阪府高槻市に本社を構える、船舶用ラッシング資材メーカーです。「イメージをスピード実現する達人として、共に未来を創ります。」という理念のもと、お客様が望むことの本質を見抜き、期待以上の提案を心がけています。1957年3月に 岡室昇之眞様が創業し、2008年7月に岡室昇志様が新代表に就任しました。今回は港製器工業株式会社の代表である岡室様に、代表に就任するまでの経緯や今後の展望などを伺いました。

ソフトウェア開発にのめり込む日々から、父からの声がけで港製器工業へ

––岡室さんが港製器工業株式会社に入社するまでの経緯を教えてください。

初めは港製器工業を継ぐつもりは特にありませんでした。大学時代からPCにのめり込み、卒業後はソフトウェア開発に従事。早くからPCを使っていたため、誰よりも早く仕事をこなせるようになり、多くの方から頼っていただけるように。

しかし、人が作ったプログラミング言語に対し、どんどん飽きを感じてしまったのです。そんなとき、父親から「そろそろうちの会社にこないか」と声がかかり、港製器工業に入社を決めました。

逆境で気付いた会社の価値

港製器工業株式会社
––代表に就任してから大変だったことはありますか?

私が代表に就任したのは2008年7月でしたが、その2ヶ月後の9月にリーマンショックが起こりました。代表になった途端に世界を揺るがす大不況が訪れ、非常に大変だったことを今でも鮮明に覚えています。弊社も半年後の2009年3月に顕著に影響が出て、売上が約4割落ちました。

しかも、2009年4月に新入社員4人の入社も決まっており、逆境に逆境を重ねた状態に。大不況の時期に右も左も分からない社員が入社し、さらには給料も支払う必要がある…。そのとき私は、新卒入社4人に「魅せる工場化プロジェクト」をお願いすることにしました。具体的には、お客様に工場見学に来ていただき、弊社の魅力を引き合いを引き出すという内容です。

新入社員たちは一生懸命工場を磨いたり、工場見学のマニュアルを作成したり、プロジェクトに一生懸命取り組みました。その結果、リーマンショックを乗り越えられただけでなく、「なぜ弊社がお客様から選ばれているのか」を知ることもできたのです。

「お客様の困りごとを解決する商品」として価値を生み出した

港製器工業株式会社
––港製器工業株式会社が商品開発にこだわるようになった経緯を教えてください。

西暦2000年は当社にとって節目となりました。当時、中国の人件費は日本の20分の1だったため、多くの会社が中国の工場に部品を発注していたのです。そのとき私は、価格を価値にしてはいけないと思いました。

そこで弊社は、お客様の要望や困りごとをお聞きして、それを解決する商品を自社で開発することに力を入れました。それにより価格の安さが価値ではなく、「お客様の困りごとを解決すること」が価値となるため、価格競争に巻き込まれることはありません。そして、この出来事も弊社の企業理念に繋がっています。

商品自体に価値を持たせることで、価格高騰にも対応できる

––貴社の企業理念に込めた思いをお伺いできますでしょうか。

弊社の経営理念は、『イメージをスピード実現する達人として、共に未来を創ります。』です。コンサルタントの方と1泊2日の合宿をし、様々な背景や想いを込めて作りました。

最近の日本ではデフレからインフレとなり、多くの原材料が値上がりしています。製造メーカーもその資材を仕入れる必要があるため、仕入価格も確実に上がっています。それを売価に反映できないと利益がなくなり、やがて赤字になるでしょう。

そのため、弊社はほぼすべての商品を値上げしました。先ほどの中国の話にも通ずるところがありますが、「コスト」を価値にすると値上げは難しくなります。しかし、弊社は商品自体に価値を持たせているため、値上げをしても購入してくださるお客様ばかりなのです。

多角的な視点から、お客様の安全と利便性を追求したサービスを届ける

港製器工業株式会社
––改めて、貴社の強みを教えてください。

技術対応力が強みです。単にお客様から言われたものを作るだけでなく、例えば建築現場に最適な工程を提案しています。弊社の鉄骨建方治具「ATOMU」という商品では、いかに安全に鉄骨造ビルの鉄骨柱を立てられるのかを強度検討書で提示。それに基づいて見積もりするという形態を取ることで、ビル建築の安全と効率性を確保しています。

このように、弊社は実際の現場にも伺い最適な製品を提供するだけでなく、多角的な視点からお客様の安全と利便性を追求したサービスをお届けしているのです。効率的な作業工程やコスト削減、安全性の相談などにも対応している点が弊社の強みです。

毎月1回“社長の言葉”を社員に贈る

––貴社では社員向けに様々な取り組みを実施していますが、中でも好評の取り組みはありますか?

毎月の朝礼で社員に贈っている「社長の言葉」が好評です。社長の言葉というのは、自分自身が経営するうえで必要に感じたことをまとめたもの。

ちなみに今月は、「戦いに向かうためには、必要な武器を装備する」という言葉を贈りました。というのも、戦国時代は戦争に負けると領土を取られたり、奴隷になったりします。これは、ビジネスの世界でも同じこと。資本主義社会は、いわゆる「戦」なのです。

そのため、競合他社に負けない武器を持ったり、新たな武器を磨き上げたりする必要があります。そして、自分たちの商品を、自信を持って販売していきましょうという意味を込めました。

この「社長の言葉」は私が代表になってからずっと継続しているため、すでに200個ぐらいの言葉が溜まっています。社長の言葉を冊子にして銀行さんにもお渡ししているのですが、非常に好評です。

3年以内に50億、さらに100億を目指す

––今後の展望を教えてください。

現在弊社には事業は大きく3つありますが、それぞれ利益率を確保しながら売上を上げていくことですね。具体的には、3年以内に50億、その後は100億を目指しています。もちろん私が先陣を切って目標達成を目指していますが、最近は幹部のやる気が高まっており、非常に嬉しいですね。

そのためには、新たな商品を増やすことが重要だと考えています。50億までは今の流れで達成できたとしても、100億を目指すとなると、現在のルートに新規商品を追加するなど新たな戦略が必要です。これからもアンテナを張って、お客様が必要としている商品を提供し続ける会社でありたいですね。