大阪府東大阪市で、“美味しい”という驚きと感動を与えるコーヒーを提供する田代珈琲株式会社。田代辰様が田代珈琲を創業し、1994年に田代和弘様が3代目社長に就任しました。
「私たちは全ての持続可能性を追求します」を企業理念とし、“田代珈琲で働くことで「幸せ」を追求できてこそ、お客様に対して満足と感動を提供できる。”という想いを大切にされています。今回は田代様に、社長に就任してからの取り組みや経営方針、今後の展望についてお伺いしました。
社員の退職から「働くことの幸せ」を追求し続けた
ーー創業についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
1994年に3代目社長として田代珈琲を継ぐことになりました。それまでは食品系の会社でサラリーマンをしていましたが、2代目社長である父が亡くなったのがきっかけです。
私が社長に就任した頃、自分の父よりも年齢の高い社員が3~4名ほど働いていましたが、定年退職しました。そこで、新たに人材を採用していたのですが、すぐに社員が会社を辞めてしまうなど、人材の確保が上手くいかない日々が続きます。
当時は「働き方改革」という言葉もなく、社員は評価されたい一心で一生懸命働いてくれたんです。とはいえ、残業代を請求すると会社からの評価が下がってしまうため、いわゆるサービス残業をしてくれる社員もいました。しかし、それが社員の負担になり、退職の原因に繋がっていたことに気が付いたのです。
それから社員が働きやすい環境を整えるため、「企業理念」や「何のために経営しているのか」を考えるべく、中小企業家同友会の勉強会にも参加。そこで、現在の企業理念である『私たちは全ての持続可能性を追求します』を掲げました。
とあるきっかけで社員の結束力が増した
ーーそれから経営は上手くいっていたのでしょうか?
社員とは何度も揉めた経験があり、そのたびに良い会社作りのきっかけにしようと動いてきたつもりです。社長に就任してからは、成功と失敗の繰り返しでしたが、少しずつ私が目指す良い会社に近づいていると思っています。
実は2023年の夏に、私はくも膜下出血で倒れてしまいました。そのとき、社員の結束力がより一層増したと感じています。私が入院している間も一生懸命働いてくれていたのが伝わり、非常に感動しました。ここまで紆余曲折ありましたが、一致団結して田代珈琲を守ってくれる社員で溢れていたことが何よりも嬉しかったです。
嘘偽りのない労働環境を作り、社員との信頼関係を築く
ーー社員が働きやすい労働環境を作るために心がけていることはありますか?
弊社に応募してくださる方は、コーヒーに携わりたいという想いが軸にあり、中でも弊社の労働環境に魅力を感じてくださる方がほとんど。弊社では、社員教育方針や社員教育制度を設けており、感動を実現できる人間性を備えた成長を目指しています。
1人の社員を育てるには非常に根気が必要ですが、「あきらめない完熟教育」が田代珈琲の社員教育方針。1人の人間と真っすぐに向き合った先に、先輩社員自身の成長があるのです。
これらの情報は弊社のホームページに記載しており、入社してくれた社員に成長を実感してもらえたら嬉しいですね。嘘偽りのない労働環境を作り、社員との信頼関係を築く。それができたら、やるべきことに粛々と取り組むだけだと考えています。
高品質なコーヒーにこだわり、お客様に喜んでいただきたい
ーー田代珈琲様で大切にしていることを教えてください。
私たちは、コーヒーの品質を非常に重視しています。世の中はインフレで、あまり状態がよくない商品も高く売られている時代。そのため、高品質で鮮度の高いコーヒー豆を適正価格で販売するのは大変な努力が必要です。しかし、お客様の心を揺さぶる感動や、目に見えない価値を付け加えることが私たちの使命であるため、日々美味しいコーヒーをお届けする努力をしています。
私たちは、特にコーヒーの賞味期限にこだわっています。焙煎したコーヒー豆は1週間以内に販売しており、売れ残った場合は値段を半額にしているんです。通常のコーヒー豆は、表示上1年を賞味期限としています。しかし、弊社は品質にこだわっているからこそ、大手珈琲店との差別化ができるのです。
そして、お客様だけでなく、コーヒーを生産する人や社員も笑顔にしたい。社員が仕事に対する「誇りと使命」を持つことで、お客様が満足するコーヒーを提供できる。これが、田代珈琲で大切にしている想いです。
娘に次のバトンを託す。それが自分の使命
ーー田代様が描いている会社の未来を教えてください。
私には現在27歳の娘がいますが、近い将来、娘にお店を継いでもらいたいと考えています。これまで娘の口から「お店を継ぐ」という言葉を聞いたことはありませんでした。しかし、私がくも膜下出血で倒れた際に、田代珈琲を継ぐ決心をしてくれたように見えたのです。
それからは娘の視座が上がり、今後のビジョンも考えているように思います。ですので、現在私が握っているバトンをスムーズに娘に渡すことが、私の現在の使命なのでしょう。