「求人を出しても応募が来ない」「やっと採用できてもすぐ辞めてしまう」──
こうした悩みは、産業廃棄物業界の経営者からよく聞かれる声です。
少子高齢化の進行により労働人口が減少するなか、産廃業界は「3K(きつい・汚い・危険)」という過去のイメージが根強く、若年層から敬遠されがち。
さらに、待遇面の見劣りや業界の認知度不足が加わり、採用難は年々深刻化しています。
こうした時代において、採用は「人が辞めたから補充する」場当たり的な行動ではなく、「将来の事業を支える投資」として戦略的に取り組むべきテーマです。
本記事では、産廃業界が抱える採用課題を整理し、戦略的に取り組むべき方向性と成功事例をご紹介します。
少子高齢化・3Kイメージ・属人化──採用困難の“構造的な原因”とは?
産業廃棄物業界が直面している採用の課題は、決して一時的なものではなく、構造的な問題といえます。まず第一に、少子高齢化の影響で労働人口そのものが減少しており、どの業界でも人材の確保が年々困難になっています。
加えて、産廃業界は長年「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージが定着してしまっており、特に若年層からの関心が集まりにくいという現実があります。これは、仕事の社会的意義が十分に伝わっていないことも一因です。
また、賃金水準や福利厚生といった待遇面で他業界と比較されたときに、どうしても見劣りしてしまうという声もよく聞かれます。安心して長く働ける環境として認知されづらいのです。
さらに、ドライバーや処理責任者といった資格者の高齢化も進んでおり、若手人材への技術継承がうまく進んでいないという課題も深刻です。
そして多くの中小企業では、採用活動が現場の担当者や総務部門の“ついで業務”になってしまっており、体系的なノウハウや戦略性が欠けた属人的な運用にとどまっています。
これらすべての要素が、採用難を超えて「経営の持続性」そのものを脅かす大きなリスクになりつつあるのです。
これらの課題は、経営の持続性を脅かす深刻な問題です。
「人が辞めてから動く」では遅い──今こそ採用に本気で向き合うべき3つの理由
採用活動に本腰を入れるべき理由は、「人がいないと困るから」だけではありません。今、業界として採用を戦略的に捉えるべき背景には、次の3つの視点があります。
1つ目は、「世代交代が本格化している」という現実です。多くの現場では、ベテラン社員が定年に近づいており、今後数年で主力人材が一気に抜けていくことが予想されます。これまでの経験や技術を受け継ぎ、現場を支える次世代の確保が急務となっています。
2つ目は、「新しいスキルセットが必要とされている」という変化です。たとえば、廃棄物処理法の改正、マニフェスト制度のデジタル化、現場管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)など、業界にも大きな変革の波が押し寄せています。これに対応するためには、従来の人材像とは異なる、新しい視点や技術を持った人材が必要です。
3つ目は、「採用ができなければ、業務そのものが止まる」という危機感です。収集・運搬・処理といった業務はすべて人の力に支えられており、人手が足りなければ業務継続そのものが困難になります。これは売上の減少や顧客からの信頼喪失につながり、会社の存続にも関わる問題です。
つまり、「今」採用活動を強化することは、未来の企業基盤を守るための経営上の最優先課題だと言えるのです。
「求人を出す」だけでは人は来ない──採用成功のための3本柱とは?
採用に取り組む際にありがちなのが、「求人広告を出すこと=採用活動」と捉えてしまうことです。しかし、求人を出して待っているだけでは、今の時代は人が集まりません。必要なのは、“戦略としての採用設計”です。そのために整えるべき3つの柱をご紹介します。
① 採用ブランディング
まず必要なのは、自社や業界の価値をあらためて定義し、それを求職者に「どう伝えるか」を設計することです。特に産廃業界では、仕事の意義ややりがいが伝わりにくいため、「働く意味」を明確に言葉にすることが大切です。採用ページの刷新、社員インタビューの掲載、仕事内容を写真や動画で“見える化”するなど、共感を引き出すストーリーづくりがカギとなります。
② 採用チャネル設計
次に、求人を届ける手段を再検討しましょう。ハローワークや求人サイトだけでなく、専門学校や高校との連携、SNSや自社サイトでの情報発信など、複数のチャネルを組み合わせて「接点の最大化」を図ることが重要です。求職者によって情報収集の手段は異なるため、「ターゲットに届く手段は何か?」を視点に選びましょう。
③ 採用後の育成・定着設計
採用活動は“入社まで”では終わりません。むしろ入社後の育成や定着こそが成果を左右します。具体的には、入社後3ヶ月間のオンボーディング(初期教育)計画を立て、何を・誰が・いつ教えるのかを明確にしておく必要があります。さらに、キャリアパスや資格支援制度、働きやすさに関する環境整備など、「長く働ける理由」を用意することも欠かせません。
このように、採用ブランディング・チャネル設計・定着設計という3つの柱をセットで考えることで、単なる“採る”ではなく、“活かす”ための採用戦略が実現します。
「人事専任がいなくてもできる?」「応募が来ない理由は?」──採用のよくある疑問に答えます
Q. 人事専任担当がいません。戦略的な採用は無理ですか?
A. 経営者主導でも十分可能です。社労士や採用支援会社と連携する方法もあります。
Q. 求人サイトに載せているのに応募が来ません…
A. 求人票の内容や写真・コピーの見直し、ターゲットに合った媒体選定が必要です。
Q. 採用と定着は別の話では?
A. いいえ。採用後の育成・評価・職場環境整備がなければ、定着しません。採用戦略は「入社後」まで含めて設計すべきです。
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つむぎではこれまで多くの中小企業様に採用支援をご提供してまいりました。採用支援を多く担当するコンサルタントが概要やノウハウについて話している記事をご紹介いたします。ぜひご一読ください。
採用戦略に関係する記事は下記にもまとめています。この機会にぜひご一読ください。
採用は“未来への投資”──事業の持続と成長を支える最重要戦略へ
採用活動は、もはや「待つ」時代ではありません。
経営課題として、事業の未来を見据えた「選ばれる会社」づくりが求められています。採用戦略=“未来への投資”として、今あるリソースから一歩ずつ始めてみましょう。