
つむぎのサービスを一つずつご紹介していく連載「つむぎサービス大辞典」。第16回となる今回は、接客の枠を超え、お客様との“関係性”そのものを育てていく取り組み「ファン育コミュニケーション」をご紹介します。
「ただ目の前の業務をこなす」から「またこの人にお願いしたい」と思ってもらえる関係性をつくる……“ファン育コミュニケーション”は、そんな「また選ばれるコミュニケーション」を実現していくプログラムです。
今回は、このサービスを担う山田祐希が、その背景にある課題や想い、そして具体的な進め方について語ります。
「またこの人にお願いしたい」“ファン”という関係を構築するサービス“ファン育コミュニケーション”
私は、接客業におけるコミュニケーションには、事務的コミュニケーション・信頼関係構築コミュニケーション、そしてこの“ファン育コミュニケーション”の3段階があると考えています。
まず事務的コミュニケーションは、例えばマニュアル通りにしか接客を行わない、いわゆる最低限の接客といえるものです。
そうした接客を受けたお客様は「この人しかいないから仕方ない」「話す内容が事務的なものだけで楽しくない」と感じてしまいます。
つまり事務的コミュニケーションは、サービス業において重要な顧客ロイヤルティを生み出す「暖かさ」や「信頼感」とはかけ離れた感情を生んでしまうのです。
一方で、信頼関係構築コミュニケーションとはお客様に寄り添った接客を指すイメージです。このコミュニケーションを行うことで「また選ばれる理由」になるのかというと、実はそうとは限りません。
たとえば「楽しかったな」「ほっとしたな」「安心したな」といった感情を生み出すことはできても、それは「何かあったときにまたお願いしたい」という感情とは微妙に異なるのです。
その場限りの満足感はあっても、長く続く関係性を生むには至らない。それが信頼関係構築コミュニケーションなのです。
それに対し“ファン育コミュニケーション”は、お客様に「またお願いしたい」と思っていただけるような、長く続く関係性の構築を目指します。
信頼関係構築コミュニケーションの時間軸をさらに伸ばしたようなイメージと言えるかもしれません。
たとえば、イベントで初めて出会ったお客様が、担当者に魅力を感じて「会員になりたい」と思ってくださるようなコミュニケーションです。“人”を軸にしたつながりをつくる、と言い換えても良いでしょう。
こうしたコミュニケーションの段階を経るには、それぞれのステップに応じたアプローチが必要です。特に“ファン育コミュニケーション”には、お客様を想う気持ちに加えて、特別な技術が求められます。
“ファン育コミュニケーション”を実現する特別な技術、その中心となる要素とは?
“ファン育コミュニケーション”では、私がこれまでの経験から編み出したコミュニケーション術を以下の5つのステップに分解しています。
名前で呼ぶ
感謝を伝える
相手を褒める・自分のことを話す
共通点を見つける
約束を守る
特別な技術と表現しましたが、実際には普段のやりとりの中で少し意識すれば実践できることばかりです。
むしろ重要なのは、これら5つを無意識レベルで実行できるようになるための動機づけにあります。
その社員さんは、仕事のどんな点に魅力を感じているのか? そもそもなぜこの会社に所属しているのか?そして、お客様からまた選ばれるようになると、どんな良いことがあるのか?
こうした動機づけを社員さん一人ひとりに対して行い、そのうえで5つのステップを実践できるように訓練していく。それが“ファン育コミュニケーション”なのです。
地元に愛される存在になるために 未来を拓くファンづくり
ファンをつくることは、葬祭業にとって大きな意味を持ちます。
葬儀というサービスは信頼関係なしには選ばれにくい商材です。またお客様の利用頻度が低いため、見込み顧客からの依頼を逃すと大きな損失につながります。
このような状況を避けるには、近いから」「顔見知りだから」という理由だけで選ばれる関係性から一歩進み、「この人がいい」「この会社がいい」と選ばれる存在になることが求められます。
こうした課題は、葬祭業界に限った話ではありません。日本では企業数が増加しており、新規顧客の獲得はますます困難になっています。
一方で、収益の8割は2割の顧客が生み出している」とされるパレートの法則に基づき、既存顧客とのロイヤルティ向上に注力する動きも見られます。
しかし「近いから」「顔見知りだから」といった理由しか築けていない場合、その取り組みも成果にはつながりません。
お客様に選ばれる存在になること、それは、新規顧客と既存顧客、双方の増加につながる大きな一歩となるのです。
とりわけ“人”の影響が大きく、地域に根ざしたサービス業、たとえばスポーツクラブや美容室などでは、ファンを育てる重要性がより高いといえるでしょう。
既存のお客様との関係性を深めることを出発点に、そのお客様が新たなお客様を呼び、やがてまったく新しいお客様もファンになっていく。
そんな正の循環の“最初の一手”として機能するのが、“ファン育コミュニケーション”なのです。
“ファン育コミュケーション”の先にあるのは“やりがい”が自然と育つ職場
この取り組みの最終的なゴールは、働く一人ひとりが“やりがい”を感じながら仕事に向き合える環境をつくることです。
「自分の頑張りが、お客様からの感謝につながり、それが会社の成果にもなって、自分にも還元される」そんな実感が得られたとき、人は自然と「もっと頑張ろう」と思えるようになると、私は信じています。
その結果「誰かの役に立てた」「自分にもできることがあった」という実感を持てるとき、働くこと自体が喜びとなるのです。
“ファン育コミュニケーション”は、単なる接客スキルの向上ではありません。
人との関わりを見つめ直し、目の前のお客様との関係性を丁寧に育てていく、そんな文化をつくる取り組みです。
つむぎとしても、そして私個人としても、この活動を通じて、地域に愛され、信頼される“人”を増やし、やりがいある職場づくりを支援していきます。
