天国葬祭様の概要

天国葬祭は、鹿児島県を中心に6カ所の葬祭場を運営している企業です。「あん人らしか、お葬式」を理念に、地域に根ざしたサービスを展開しています。

現在、社会的に人材不足が課題となるなか、採用後の「定着」をいかに実現するかは、多くの企業にとって重要なテーマです。
特に葬祭業界のような専門性が高く、その場の対応力が求められる現場では、入社後すぐに成果を出すことが難しく、離職リスクが高まりやすい傾向にあります。

天国葬祭も人材の定着に悩む企業の一つで、当時は離職率80%という危機的状況でした。

支援の背景

天国葬祭ではかつて、つむぎの支援の一環で多くの人材を確保しました。
しかし採用を進めた結果わかったのは、天国葬祭という企業は、まだ人材を多く保有する地盤が整っていなかったということでした。

具体的には、中途社員が天国葬祭という新たな環境に馴染めない人が急増。不安を抱えたまま成果も出せず、理由も告げずに辞めていくというケースが後を絶たなかったのです。

弊社はこうした課題の相談を受け、カケハシインタビューというの伴走型支援サービスの導入を提案しました。
天国様におけるカケハシインタビューでは、入社一年未満の社員様を対象に設定。弊社の紡ぎ手と該当の社員様が毎月インタビューを行っていきます。

深いインタビューを持ち味とする紡ぎ手が時間をかけて対話することで、今まで得られなかった現場の声や離職の実情が次第に顕在化し、本格的なオンボーディング強化が始まりました。

実施した施策

中途採用におけるオンボーディングは、4つのステップから成る型が存在します。この型の目的は、中途社員がいち早く企業に馴染み成果を出すことです。
一方ですぐに成果を求められない新卒採用ではまた違った型が存在します。

中途採用におけるオンボーディング4つのステップは、まずは中途社員に自社へ馴染んでもらうための「マインドセット構築」、次に業務を遂行するための「人間関係構築」、そして成果を出すための「情報提供」、最後に「活躍」という流れで構築されています。

中途社員が必要な情報にスムーズにアクセスできるようにし、成果を出す下準備を整える。
それが、中途採用におけるオンボーディングで重要な意識なのです。

まず初めに天国葬祭では、「人間関係」の部分を整えるため、「つむぎコネクト」というサンクスカード型ツールを導入も提案し、運用いたしました。並行して「情報提供」にあたる業務の理解を促進するためにマニュアルの構築を提案し、構築していきました。

つむぎコネクトの運用を急いだ理由には、天国葬祭の離職率80%の背景に、「人間関係構築」の部分が大きく関連していたからです。
働く場所において人間関係は何よりも大切です。

そのため、マニュアルを制作を始める前に、感謝の言葉を日常的に交わす文化を根付かせることで、組織の土台づくりに着手したのです。

プロジェクトの成果

マニュアルの整備では、あえて入社歴の浅い若手社員をリーダーやサブリーダーとしてアサインし、自分たちの言葉で業務の流れを可視化していきました。

入社歴の浅い彼女たちは、比較的入社時の戸惑いの記憶が新しく、よりペルソナに近い感情を持っています。そんな彼女たちだからこそ、伝わるマニュアル作りができると考えたのです。
また裏の目的として、タスク管理やコミュニケーションの実施などを通し、ビジネスパーソンとしての成長の機会とすることも意識しています。

この取り組みを通じて、例えばセレモニースタッフの一人は、スケジューリング力を身につけることができ、また新人教育の担当に抜擢されるといった結果が生まれています。
もちろん当初の目的であった、新人にとっての不安を払拭するマニュアルも完成しています。

成功の要因

マニュアル作成のような長期的な取り組みは、どうしてもメンバーのモチベーションに波が発生してしまいます。特に葬儀社様においては、現場と全く違う進め方のため、メンバーの中に進め方についての戸惑いがある点も無視できません。

こうした状況で意識したのは、「いつまでに何をしてほしい」という期限管理を行うだけでなく「期待している」「進捗を見ている」という誠意と成長への期待を伝えることでした。こうした関与が、社員の主体性を引き出す原動力となったのです。

また、すべての取り組みには「なぜ今それを行うのか」という意味づけを行い、単なる作業に終わらせない工夫を施してもいました。

今後の展望

「人が辞めない組織」をつくるためには、仕組みの整備だけでは不十分です。制度を支える人の関与と、働く意味を明確にする設計が欠かせません。

天国葬祭の取り組みは、関係性の構築を出発点とし、若手の成長と中途社員の活躍支援を戦略的に組み合わせることで、離職率の低減という目に見える成果へとつなげました。

今後は、オンボーディングを「1年で一人前に育てる」プログラムとして体系化し、採用・定着・成長を一本の戦略的な流れとして確立していく構想も進行中です。感情と環境の両面から設計されたオンボーディングで、組織の持続的成長を支えていきたいです。

お問い合わせ

 

こちらの事例の詳細や、他の会社様で実施した際の成功事例についてをセミナーでお伝えする予定です。ぜひご参加ください。

詳しく見る

つむぎコンサルタント:外川多加斗
2024年3月入社。現在は、HRブランディング事業部にて、中小企業の組織開発支援、採用支援、評価制度支援などを中心にHRコンサルタントとして活動。社内では、ウェルビーイング責任者としても従事している。