この記事はクリニック経営者(開業医)で、スタッフマネジメントに悩んでいるという先生方に向けて、自院のマネジメント方法を見直すきっかけとなる内容を書きます。(※クリニック向けのHRコンサルタントが執筆しています。)

 

あなたのはどの段階?クリニック組織のステップ3段階を紹介

弊社はクリニック向け(皮膚科・耳鼻科・眼科・整形外科・産婦人科・内科等)のHRコンサルティングの経験が豊富ですが、クリニックの組織は大きく分けて3段階あります。

ステップ①
10人以下の組織で、基本的に院長が全メンバーに目が届く。

ステップ②
10~20人程度の組織で、院長の目が届きづらくなり、コミュニケーションエラーが起こりやすい。

ステップ③
20~30人以上の組織で、さすがに院長の目が届かないので、階層を作る形でマネジメントをしなければいけなくなる。

 

ポイントは「院長が現場メンバーのどの程度まで目が届くか」という点です。組織の人数が増えてきた、あるいは分院を出して院長の目が届かなくなってきたのにも関わらず、マネジメントのやり方を変えないと、現場で色んな課題現象が起こり、最終的には組織崩壊を引き起こしかねない事態へと繋がるケースが散見されます。そのため、組織の状態とマネジメント手法は合致させないといけないという事になります。

 

簡単に概要だけをお伝えすると、ステップ①の医院では「院長がスタッフさんとコミュニケーションを密に取る事」を意識すれば組織としてはまとまりやすく、マネジメント難易度は比較的に低いといえます。ステップ②になると、医院方針や年間計画作りや組織図作りや会議体の見直しなど、やらなければいけない事が一気に増えます。ただし、この段階では「院長の想いに皆が付いてきてもらう事」が一つのゴール設定となります。次にステップ③になってくると、医院理念作り(ビジョン・ミッション・バリュー作り)やマネージャー育成や部門長育成(看護師代表や事務代表など)を行い、「マネージャーや部門長を中心とした組織作り」へと変革していきます。ちなみに、もっと組織が大きくなり50人体制ぐらいになってくると分院も増えてくるタイミングなので、本部機能を作って「本部中心の管理システムを構築していく流れ」が一般的です。

地域一番レベルのクリニックが運用する、 7つのマネジメント法

少し話が飛躍してしまいましたが、今回は地域一番レベルのクリニックで最も多いと思われる10~20人組織のスタッフマネジメント法に焦点を当てます。具体的な手法は下記の7つで、この手法で成功している医院は①から順に約半年から1年間をかけて実行していきました。

10~20人組織のクリニックマネジメントのコツ
① 経営方針発表会で院長が語るゴールイメージやその背景を整理する。
② 経営方針発表会で、組織のゴールイメージを共有する。
③ マネージャー、リーダー、サブリーダー、サブリーダー候補を決める。
④ 各階層の役割を設定する。
⑤ 会議体を変える。
⑥ 情報共有ツールを導入する。
⑦ 成果報酬(インセンティブ)を設定する。

 


 

経営方針発表会で院長が語るゴールイメージやその背景を整理する。

まず、経営方針発表会というイベントを開催する段取りから始めます。日取りはできれば半日の診療を切るか休診日で調整し、場所は地域一番のホテルや旅館や会合施設を予約します。そのイベントでは院長が30分から1時間程度は話す時間を作ります。そこの場で、院長の過去、医院の過去、現在の経営状況、今後やっていきたい事などをパワーポイントの資料にまとめて話します。そのための内容イメージを固めます。

 

経営方針発表会で、組織のゴールイメージを共有する。

院長発表の中で、自分たちはどういった組織を作りたくて、そのためにはどういう役割を持った人が必要なのかを共有します。できれば、参考にしたい組織事例があればそれをスタッフさんに共有するのも有効な手です。(その組織事例に実際に見学に行かせてもらえるとベスト!)

 

マネージャー、リーダー、サブリーダー、サブリーダー候補を決める。

次に、職種を超えたマネジメント人材としてのマネージャー、職種内リーダー、職種内サブリーダー、その下の次世代サブリーダーを選定します。どうしてもふさわしいメンバーがいない場合は無理やり選定せずに、あえてその枠は誰もいないという事にするケースもあります。

 

各階層の役割を設定する。

次に、組織の中で書くマネジメント人材に担ってもらいたい役割を定義していきます。具体的にこういった仕事をしてほしいというレベルまで洗い出せるのがベストです。

 

会議体を変える。

続いて、会議のやり方を見直します。次の3つに会議のやり方を変えるケースが多いです。①全体会議(参加者:全員)、②代表者会議(参加者:院長+マネージャー+職種内リーダー)、③部門会議(参加者:職種内会議なので職種メンバーのみ)。この中で一番大事な会議は②代表者会議です。この代表者会議で医院方針や施策を話し合うからです。③部門会議は②代表者会議の内容を受けて、より職種内で話し合ったり、逆に職種内からの声を②にあげたりする役割があります。①全体会議は基本的に情報共有が主な役割です。

 

情報共有ツールを導入する。

会議体を変えることで院内のコミュニケーション量が多くなるため、コミュニケーションの交通整理や議事録等での情報蓄積をする目的で情報共有ツールを導入します。よく使われるツールはLINEワークスです。ただ導入して終わりではなく、投稿ルールも決めていく必要があります。

 

成果報酬(インセンティブ)を設定する。

10人以下の時は院長のトップダウンで施策を進めてきましたが、10人を超えてきてマネージャーやリーダーを中心に自分たちで考えて施策を進める体制に移行するにあたり、その頑張りを認める制度も整える必要があります。よくありがちなのは、頑張りは賞与に反映するという不透明な形で話を進めようとする院長がいるのですが、そうしてしまうと頑張りがダイレクトに自分の評価に繋がらない感じがして現場のモチベーションがダウンしてしまいます。できれば当月か翌月の給料に反映されるような仕組みを作りたいです。

このような施策を進めていただくことで、半年から1年かけて徐々に組織が変わっていく事を実感される先生方が過去たくさんいらっしゃいました。

 

最後に抑えるべき2つのポイント

ここからは最後に、今までの内容を踏まえて2つのアドバイスをお伝えします。

 

組織作りの基本は上からです。
組織作りで悩まれる先生方の中で、現場の下っ端スタッフ層から手を付けていこうとするケースが多いですが、これは大抵上手くいきません。組織を変えるにはまずは上からです。マネージャー→リーダー→サブリーダー→その他という順番に、方針固め・役割整理・責任整理・権限移譲を行う必要があります。当然その一番上は院長なので、院長の理念作りや経営計画作りから全てが始まる訳ですが。この順番を間違えると、いつまで経っても結果が出ず、院長が諦めてしまって全てが終わってしまうケースがありますので、要注意です。

 

サブリーダー候補はイベント企画で育てるのがおススメです。
各職種のリーダー(看護師リーダー、事務リーダー、PTリーダーなど)がしっかりしてくると、医院の屋台骨は強くなりますので、ここで安心してしまう院長も多いです。しかし、そのタイミングでサブリーダー育成やもっと先のサブリーダー候補育成まで手を付けられるかが肝になります。基本的にリーダーやサブリーダーは日々の業務の中で仕事力が鍛えられますが、サブリーダー候補までいくと日々の仕事自体は他の人と変わりがないから特別に将来のリーダー教育という事は難しくなります。そこでおススメなのが、サブリーダー候補はイベント企画・運営で育てるという事です。できるだけ院内イベントの方がリスクを考えると良いので、最近ならオンライン歓迎会を任せてみるというのも手です。院長やマネージャーからは、オンライン歓迎会の開催目的や狙いだけ伝えて、後はどういう内容にするのかは任せて、逐次報告をしてもらうというやり方が良いです。そういう経験を通じて、上の役職の方との接し方や仕事調整力が身につくからです。さらに、その企画をやり切った暁には、院内での自分の役割や居場所が出来て承認欲求が満たされ、帰属意識や勤続意識が高まる可能性も秘めています。

 

今回の記事は、過去に弊社がHRコンサルティングをさせていただき、実際に組織改革が行われたクリニック事例をもとに、その成功ポイントを掻い摘んでお伝えいたしました。このように、つむぎ株式会社ではクリニック向けのHRコンサルティングしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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