勢いを肌で感じたベトナム視察。違いを感じたからこそ見えたもの。

11月上旬、海外にも行きやすくなったこのタイミングで、経営者仲間4人でベトナムを訪問。その勢いを肌で感じ、考えることも多くあったので、その学びを皆様と共有したいと思います。

そもそも訪問の目的は?

2020年からのコロナ期間中、まったく世界が変わってしまったのが海外との接点を持つことでした。オンラインが進み、ある意味、距離は近くなったものの、直接体感することができなくなりました。日本で事業をしているつむぎ㈱として、海外進出する予定は全くないものの、国内だけで情報を仕入れても井の中の蛙になってしまいます。
そんなこともあり、成長著しいベトナムに行ってきました。今回はITやHR系企業など、現地の企業を7社訪問し、いろんな学びをいただきました。

ベトナムは、2023年第3四半期のGDP成長率が5.33%。少し成長が鈍化しているとは言うものの、銀行金利も5%を超えると言いますし、マンション価格なども10年で2倍になっているとのこと。率直な印象としては「勢いが違う」ということ。
アテンドしてくれた会社さんの話によれば、企業は週休1.5日。なぜならば「働けば働くほど売り上げになるから、休むのがもったいない」とのこと。私は高度経済成長期の頃には学生で肌感がありませんが、きっと当時の日本もこんな感じだったのだろうなぁと思いました。

圧倒的に成長している状況においては、「働きやすさ」というキーワードが出てくることはないのですね。働けば働くほど売り上げになり、それは自分の給与として返ってくる。働く量と売り上げ、収入がイコールにならないからこそ、「働きやすさ」が大事になるんだなと実感しました。まさに産業全体が成熟していることを感じさせるわかりやすい言葉だったと感じます。

衝撃を受けた送り出し機関のJHL


まずとても印象に残った場所が、技能実習生の送り出し機関のJHL。日本企業からの内定を受けたのちに6か月間の日本語教育を行う教育期間を拝見させていただきました。学生のみんなはとにかく明るい、礼儀正しい、まじめ。私たちも授業に一部参加させていただきましたが、すごく積極性もある。質問をすれば全員が手を挙げて、誰か質問がありますか?と聞けば、また全員が手を挙げる。
同じ年齢の日本人学生と並んだ時に、どっちを選ぶかなと問われると、すごく難しく感じるほどでした。
技能実習で日本に行くという目的があることももちろん大きいわけですが、とにかく「厳しい」講習でした。返事をしない、ルールを守らない、そういった類では罰則が徹底されています。先生は単に偉そうにするだけではなく、先生たち自身もプロジェクトを回し、改善活動に貢献する。学校全体に「厳しさ」が根付いている。
ここで中心で働く日本人の方にお話をお伺いしましたが、「日本とベトナム、どちらにも貢献できる仕事がないかと考えて、今の仕事を選びました。」と、すごく使命感を持って仕事に向き合う、その姿がとても印象的でした。

成長している企業に生まれる人材紹介というマーケット


ベトナムではHR関係の企業の視察として、いくつか人材紹介事業を手掛ける企業にもお伺いさせていただきました。正直、成長が続くベトナムにおいて人材紹介事業が成り立つのかが疑問でした。というのも、どこへいっても企業は元気。人がいればその分売り上げが伸びる状態。そして働きたい人もたくさんいる。さらにいえば、ベトナムはFacebookがかなり盛んで、その中でコミュニティが作られ採用のスカウトもあるとのこと。わざわざお金を人材紹介会社に払う必要があるのだろうか?と思っていたのですが、成長企業ほど抱える課題がありました。それが「管理職」問題。
人が増えるとその分チームを作らないといけない。必ずしも現場の中からそのスピード感にあるだけのマネージャーが生まれるわけではない。ゆえに管理職人材が不足していく。そこに人材紹介のマーケットがあるという感じでした。
成長企業ならではの問題でいえば、これは日本でもベトナムでも変わらない話です。弊社のご支援先も、成長している企業が多くあり、そのためにマネージャー教育としてサポートさせていただくことが多くあります。ここを教育でカバーするのか、採用でカバーするのかの違いだなと。ただ、のちにも触れますがITトップ、国内全産業でTOP5にも入る企業はさすがの教育制度で、マネージャー育成プログラムがしっかりと整っているとのこと。いずれ、マネージャー業育もベースになっていくのだろうと感じます。

日本のIT業界も変わるかもしれないと感じさせるオフショア企業群

そして何社かお伺いさせていただいたのがオフショア企業。日本のプロダクト開発を担う現地のエンジニア集団です。中には1年間徹底的に教育しプログラミングの技術を学ばせている企業やオールマイティに対応する企業もありと様々。ベトナムには日本語が達者な人も本当に多く、間にそういった人が入ってくれるならば全然安心だろうなと思いました。
何より感じたのが、日本人プログラマーの価値が今後どうなるだろうか、という点です。
日本では圧倒的にエンジニアが足りない、そのために市場価格がどんどん上がっている、という現状はあります。一方でベトナムにはどんどんオフショア企業が誕生している。そして教育もしっかり行っている状況を見ると、国内開発である必要もなくなってくるのではないかとも感じました。現に私と一緒に訪問したIT系の仲間は、すぐに商談の場を設けていました。

圧倒的なスケールを感じたベトナムTOPのIT企業


そして最後にお伺いしたベトナムITの最大手、FPT。以前アメリカのGoogle本社に足を運んだことがありますが、雰囲気としてはまさにそんな感じでした。敷地内にはサッカーコートもあればゴルフの練習場もある。巨大なカフェがあり、何なら住宅も兼ね備えている。プレゼンルームなんともスケールが大きく、この場所でいろんな商品開発プレゼンや講演も行われるとのこと。日本での会議室とはわけが違いますね。


ハードはもちろん目立つのですが、一方でソフトも充実。特に教育に関しては徹底的な力の入れ具合。先にも述べたようにマネージャー育成ももちろん充実していますが、プログラミングのスキル教育には相当な時間とコストを割いている印象です。言語ごとに毎日勉強会が開かれており、社員は好きなところに参加してよい。驚くのは、それが就業時間中でも全く問題ないとのこと。中には1日のクラスもありましたが、仕事よりも優先して参加してもよいのだそうです。それは、スキルをしっかりと身につけておかないとそもそも価値を提供し続けることができないからという発想。毎年30%成長を続けてきたと言いますが、そんな成長を支えるために教育制度はとても大きな役割を占めていると感じました。

ベトナムにおける「VMV」という存在

つむぎは、「いい会社」を創るサポートをする会社です。その中心にはVMV(Vision・Mission・Value)といった会社の大切にする考え方は欠かすことができません。
いろんな企業にお邪魔する中で、この「VMV」はどのようにとらえているかということを気にしながら見ていました。最後にお邪魔した会社はベトナムの働き甲斐のある会社にも選ばれている企業。そのマネージャーの方に「今後どんな目標を持っていますか?」と聞くと、「会社の成長に貢献すること」と返ってきました。
成長の先にどんな世界を実現したいかというよりも、成長することが重要である。これはその企業だけではなく、全体を通しても感じたことです。
ただこれはVMVが必要ではないということではなく、会社のベクトルを揃えるために、「成長」というものがあれば、VMVを強く伝える必要はないのだろうという理解です。成長を実現すれば、経営者としてはVMVの実現に近づいていくはずですので、問題ないのだろうと。
一方で、アテンドしてくれた会社さんはしっかりと理念を持っていましたし、それは社員さんとのやり取りからも徹底して感じられるものでした。そして、転職のハードルが低く、離職リスクがこれから高まる可能性があるので、それから逆算すれば理念はなくてはならないものであることは間違いないともお話されていました。
要するに、VMVというのが強く打ち出されるかどうかはステージによるということでしょう。成長期で勢いをつけるときのVMVの立ち位置と、成熟期におけるVMVの立ち位置は変わります。それは業種ごとにも違えば、企業ごとにも違う。
つまるところ、そういった企業のステージを正しく把握することも、私たちが正しく企業をサポートしていくうえでなくてはならない力であることを改めて実感するのでした。

4泊5日のベトナムツアー。とても刺激的な日々となりました。

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