ワークスマイルラボ外観

当社が主催する、いい会社を目指す異業種交流会「いい会社づくり勉強会」。普段は数ヶ月に一度、ZOOM上で集まり意見を交換するコミュニティです。
そして、今回はいよいよ初の現地視察。岡山県岡山市を拠点としている、働き方改革の事例企業・株式会社ワークスマイルラボ様(以下・ワークスマイルラボ)を視察させていただきました。
ワークスマイルラボは中小企業でありながら、山陽新聞による新卒採用岡山県希望就職先ランキングにおいて、他の多くの大手企業を抑え、2022年は1位、2023年は3位という人気を誇り、社員への理念浸透率100%、一人当たりの年間平均売上高2500万円以上というとても素晴らしい企業様です。

これらの背景にあるのは理念の存在だといいます。
本記事では2023年7月31日に行われた視察の様子を通してワークスマイルラボの新卒採用への道のりやポイント、来店体験型のオフィスの様子などをレポートしていきます。

ワークスマイルラボの歴史・理念誕生の背景

視察はまず、用意していただいた 1階・会議室にて、ワークスマイルラボの代表・石井聖博(まさひろ)氏)(以下・石井代表)による、ワークスマイルラボとその前進・石井事務機センターの歴史、そして理念策定の背景についてのお話から始まりました。

ワークスマイルラボ・石井代表

ワークスマイルラボ様の創業は約110年前。当時は石井弘文堂という名前で文房具を扱っていたそうです。事業は2代目、3代目と承継され、名前も石井事務機センターへと変わっていきました。
しかし2000年代初頭、価格競争の激化によって業績が悪化。畳み掛けるようにリーマンショックが起こり、その影響によって倒産寸前にまで追い込まれたといいます。

その時点で石井事務機センターには99年の歴史がありました。また家庭の事情もあったため、石井氏は会社を存続させる方法を模索。
そうして銀行へ交渉に向かい、ひとまずの返済に猶予を得た代わりに、根本的な解決策として新たな事業の計画を練ることとなったのです。
そうして生まれたのが、理念の策定とそれをもとにした、笑顔あふれるワークスタイル提案業でした。

約100年間積み重ねてきた軸をブラさずに、事業を転換させる。
その裏には「自分たちは一体どんな仕事をしていきたいのか」という自社の在り方を見つめ直す、アイデンティティに悩む時間があったのだと思います。
わずか数十分でしたが、石井代表の苦悩と美しさの詰まったお話でした。

笑顔あふれるワークスタイル提案業のコンセプトとは?

後半は新卒採用についてのお話。
石井代表は、笑顔あふれるワークスタイル提案業を実現していくために、新卒採用が必要だったといいます。

理念を策定したタイミングでの従業員は、石井事務機センターから引き続きで約17名。そのうち正社員として働いていたのは10名以下でした。
普通の中小企業にとって、この状況で新卒採用に乗り出すのはリスクが大きすぎます。しかし、石井代表は「やる必要があった」というのです。

理念を策定した2015年。石井代表はじめワークスマイルラボでは2025年に向けたビジョンも策定していました。そのビジョンを実現するために、価値観を合わせられる若い人財が必要だったのです。

ワークスマイルラボ 講演の様子

そうして始まった、ワークスマイルラボの新卒採用。
試行錯誤を繰り返しながらわかったことは、中小企業の新卒採用にとって一番のリスクはお金をかけて獲得した人材が入社を辞退してしまう内定辞退だ、ということでした。

そこで得た学びを活かし、現在、新卒採用はいかに学生を惹きつけるか、第一志望になれるかを意識して行なっているといいます。
また内定決定後も継続的にフォロー。例えば毎月会議に出席してもらいそのご食事会を行ったり、経営方針発表会で発表をしてもらったりして、モチベーションを維持させつつ、即戦力として働いてもらえるよう育成をしているのです。

新卒採用をするどの企業にとっても課題となるであろう、新入社員の育成。しかしワークスマイルラボはその課題すら、内定者フォローの仕組みに取り込んでいました。
大きな課題を一つひとつ切り分け、整理し、繋げ、解決する仕組みを作る。言葉にすればシンプルな道筋ですが、実際に行うのは至難の業です。
先ほどの事業転換もそうですが、随所光る社長様の慧眼を感じられるお話でした。

理念経営におけるトップダウンの大切さ

最後には質疑応答が設けられ、さまざまな質問に対して石井代表に回答いただきました。

そのなかでも印象的だったのは、「どこまでを代表自身がやられ、どこまでを社員に任せているのか」という質問。
石井代表はその質問に対し「理念の浸透には在り方とやり方の2つがある。“在り方”とは価値観を合わせることで、ワークスマイルラボでは“価値観”を優先順位とレベル感を合わせれることと定義している。
在り方は、私の考えを専務である弟に伝え、専務が幹部へ、幹部がその下の社員に伝える方式をとっている。一方でやり方は、それぞれの担当してくれる社員たちの経験をもとに任せる形をとっている」ということでした。もちろんある程度の反発もあったといいます。
特に弟さんである専務様とは一週間の合宿を行い、価値観をすり合わせていったのだそう。

ワークスマイルラボ 理念浸透の様子
入り口に書かれている「お客様の宣言」も、理念浸透がなされているからこそのものでしょう。

一番大きなインパクトとなったのは新卒採用で、新卒で入ってきた社員が一定数を超えたところで会社の雰囲気が変わってきたとのこと。それまでは、なかなか理念が浸透せず、辛抱強く理念を語る日々が続いたといいます。

理念浸透や理念経営というと、社員の自主性に重きを置いたボトムアップ型の組織を思い浮かべますが、それを実行するにはかなりの時間と社員の急激な成長が必要です。

ワークスマイルラボのように短期で理念浸透をし、成果を出さなければならない場合は、代表自身が社員へ意思をしっかりと伝え、同時にその仲間を増やすトップダウン型の組織運営が有効なのでしょう。
また、社員たちの自主性を成長させるために、部分的にボトムアップ方式を採用し、やり方を任せることが大切となってくるのですね。

新感覚!!来店体験型オフィスでの発見

後半に行われたのは、2階にあるワークスマイルラボの来店体験型オフィスの体験ツアー。ワークスマイルラボでは、働き方の効率化を実現するための施策を日々、実験しており、そこで成功を収めたものがサービスとして提供されているのです。

ワークスマイルラボ オフィスの様子

展示されているソリューションは40個以上。10個の課題に合わせ紹介されていますが、今回はその中でも、紹介していただいた中で特に興味深かったソリューションをお伝えしていきます。

最初にご紹介するのはテレワーク環境の整備。オフィス中央奥には大きなモニターがあるのですが、そこに表示されているのは現在、ワークスマイルラボでリモートワークをされている方々の姿が。

ワークスマイルラボ リモートワーク環境の様子

ワークスマイルラボでは業務を表にまとめ管理し、かつ成果軸で評価する仕組みをとっていることでリモートワークでも問題なく作業できる環境が整っているのだといいます。業務委託やアルバイト、さらには国外から出勤されていた方もいるそうです。
また成果軸で評価する仕組みによって、追いかける指標が売上から、オフィスへお客様をどれだけ招待できるかへと変わり、高い生産性のブランド価値の向上に繋がっているのだといいます。

こちらはスマートドライブシステムという、どの車が誰の運転で、どこを走っているか、随時確認できるシステム。

ワークスマイルラボ スマートドライブシステム

ワークスマイルラボではかつて、車の運転に慣れていない若い人財が増えたことで事故が多発し、保険料が肥大化してしまう時期があったそうです。
そこでスマートドライブシステム導入。その結果、月の事故件数は減少し、それに応じて支払いも減っていったといいます。

興味深かったのはその後。紹介のなかで「以前見学に来られた会社様は、違う使い方を検討されていました」というお話がありました。
それは会社様とは運送業をされている方で、運転の丁寧さは荷物のきれいさ、さらにはお客様の満足度につながるため、把握しておきたいのだそう。
優れたツールほどこういったニッチは使い方が出てくるものですが、どれを自社が考える一番の訴求ポイントとするかは、マーケティングのバランス感が問われるポイントなのでしょうね。

加えてありがとうを伝え合う“ありがとうの輪”も素敵な取り組みだと感じました。

ありがとうの輪

「ありがとう」といった暖かい言葉が飛び交う環境は、どの場合でも居心地の良さを感じるものです。以前はオンラインで送り合うシステムだったらしいのですが、投稿数が伸び悩んでしまい、現在は紙媒体へとチェンジ。するとみるみるうちに寄せられる声が増えたそうです。
ほんのちょっとの違いで大きな効果が現れる。行動経済学……とはちょっと違うのかもしれませんが、実際の業務にも活かせる発想の転換だと感じました。

他にもオフィスにアロマを焚く“香り”、学生に喜ばれる“福利厚生”、業務効率を上げる退社宣言・NO TALKカードなど、様々な施策が展示されていました。

退社宣言・NO TALKカード

特に最後に展示されていた大型モニターは、視察に行かれた社長様たちの間で大人気で、その場で契約を決めてしまう方もいるほど。コロナは陰りを見せたといえど、リモートワークは着実に浸透しているんだなと感じました。

印象的だったのは、当然ですが展示されている商品一つひとつが、ワークスマイルラボの文化に合わせ、成長してくために組み合わさっているということ。
「笑顔あふれる働き方」という、一見するわからない”コト”を売るための仕組みが随所に溢れていて、私たちも見習うべき箇所がたくさんあるなと感じました。

最後は会議室へ戻り、専務様による質疑応答。その後、参加者同士の共有の時間をとり、終了となりました。

その後、有志のメンバーは岡山駅で懇親会へ。みなさんそれぞれ、親睦を深めていました。

ワクスマ 懇親会の様子

まとめ

0の状態からいかに理念浸透をおこなうか、が大きなテーマとして存在していた今回の視察。結論として、どれだけのスケジュールで行うのか、そのための計画をいかに細かく詰められるかが重要なのだと感じました。

ワークスマイルラボ様の場合であれば、短期で結果を出さなければならないために社長様が勢力的に伝える必要があった。そして理念に共感する若い社員を集めるために新卒採用をする必要があった。
逆に長い時間をかけていいのであれば、社員から湧き上がってくる言葉をもとに、社員主導で考え、浸透させていく手法も取れるはずです。

ワクスマ ロゴ

自社はどう在りたいのか。それはどのくらいのスピード感なのか。この二つを決めることが、経営者や個人で仕事をするフリーランスが成長するために大切な事柄なのだと感じました。