2020年という一年は葬儀業界だけではなく、全ての産業において変化の必要性が迫られた一年でした。
そしてこの時期に変化に対応できた会社というのは、今後様々な変化が起きた時にも対応できる強い企業でしょう。

実際に、このような動きを見せた葬儀社もあります。

・スタッフ側の集団感染によるサービス提供を避けるために、
・即時に本社を2拠点に分け、チーム体制のオペレーションに変更
・直接訪問できない会員様に対して、何とかコミュニケーションをとる方法はないかと、
・1週間でユーチューブチャンネルを作り、お客様に笑顔をお届けする企画を発信
・会葬者減に対応し配膳スタッフの配置換えを即時に決断。
・葬儀に関わる人員体制の見直しも同時に進め、高収益体質企業へ転換

こういった素早い動きができる企業は、経営者の判断が早いのはもちろんのこと、会社の考え方を従業員理解し、
スピード感を持って動くことのできる「組織開発」が十分にできているといえます。

組織開発には様々な観点がありますが、今回は「理念を軸とした強い会社」をどのように創るかという観点から、その手法を具体例を用いまとめました。

<この記事を書いた人>
つむぎ株式会社 代表取締役社長 前田亮。静岡県立清水東高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒で株式会社船井総合研究所に入社。エンディング業界の立ち上げを行い、以降100社を超える葬儀社の支援を行ってきた。チームリーダー、グループマネージャーを得て、35歳で部長となる。「働くがやりがいに、そして人生を幸せに」をフィロソフィーに掲げ、2020年独立し、つむぎ株式会社を創業する。

 

組織開発とは何か?

組織開発とは、簡単に言うと「組織のパフォーマンスを最大化するための取組」です。

近い言葉に、人材開発というものがありますが、人材開発は「人」にアプローチするのに対し、組織開発は「組織」に焦点を当てて、全体のパフォーマンスを最大化します。

例えば、葬儀施行の現場において、返礼品の数の変更依頼があったものがしっかりと情報伝達がされておらず、数が足りないという状況が起きたとします。

「人」に焦点を当てると、なぜその人がホウレンソウを怠ったのか、ホウレンソウレベルをしっかりと高めるにはどうするかと考えてアプローチします。一方「組織」に焦点を当てると、なぜ伝達ミスが起こったのか、その仕組みにフォーカスし、同じことが繰り返されないように仕組みや、そもそも会社の風土に焦点を当てるという違いがあります。

組織開発を行うことの重要性は、スポーツの世界をイメージするとわかりやすくなります。人材開発とは、1人1人を、いち早く戦力化し、エースに育てる事です。しかし、それぞれがレベルを高めたとしても、ベクトルが同じ方向を向いていなかったり、コミュニケーションが不足しているチームで、日本一になることは到底難しいでしょう。

高いレベルにあるそれぞれのメンバーが連携、さらに同じ方向を向いて進んでいるチームの方が間違いなく強いのは言うまでもないことです。組織開発が実現するのは、今いる人材が最大限のパフォーマンスを発揮し、チーム力を最大化するということなのです。

では、どのようにして葬儀社における組織開発を行っていくのか、具体的な事例をもとにその手法をお伝えしていきます。

情報を透明化しよう

「サービスが先、お客様が後」を掲げ、イベントにはお客様が運営側に手伝いに来てくれる、インタビュー動画の役者を演じてくれる、お客様のためにオリジナルカレンダーを作ることのできる社員がいる、そんな素敵な葬儀社と10年以上のお付き合いをしています。

しかし、その会社と出会った当時、2000万円の赤字を抱え、意識は「どうすれば売上が伸びるか」という、いわば営業会社に近い雰囲気でした。何とかしてまずは赤字を解消しなければいけない。そして最初に取り組んだことが「情報共有」でした。赤字であることを包み隠さず、経費内容まですべてを会社内でオープンにしました。

それぞれの従業員が「売上だけ上げればよい」という意識から変化し、どうやって利益を出すか、工夫して、行動できるように徐々に変わります。何より、同じ方向を向くための土台ができました。情報をオープンにするということは、会社から従業員に対する信用の証です。会社からの信用がなければ、従業員の信用が生まれるはずもありません。

「情報の透明化」は、今後ますます重要になっていきます。今は情報がありふれている時代です。企業におけるグループウェアも多くのサービスが提供されています。

もはや情報を共有することが「大切な」時代ではなく、情報は共有するのが「当たり前」の時代になってきているのです。その中で「共有しない」という選択は、むしろマイナスです。

特に今は匿名の口コミも多くあります。転職会社の口コミサイトや、Googleにも口コミを書き込める時代です。
もはや情報の透明化は、組織開発のための「入口」ともいえます。

VMVをリブランディングしよう

キリスト教には聖書があるように、仏教には経典があるように、組織が大きくなっていく過程の中で、また強い会社となるためには、その軸となる考え方が必要なのは言うまでもありません。

特に重要となるものがVision、Mission、Valueの3つです。これらをしっかりと文言化している会社は数多くあります。一方で、経営者が、従業員がこれらを意識した上で経営、仕事をしている会社は全体の1割程度ではないでしょうか。

これらの3つは航海でいえば、Visionは目標地点。次にどこを目指すのか。これは達成したらより高い目標に設定できます。Missionは何のために航海をするのか。その目的にあります。経営でいえばその会社の存在意義とも言えます。Valueは、目的を追求するために、目標地点に到達するために抑えるべき価値観、行動基準になります。重要なのは、これらの3つがしっかりと連動していること。特に従業員が日々の仕事で意識すべきことは、Valueです。VisionやMissionは、日々の仕事の中で意識するには大きすぎるからです。

つまり、Valueを意識し仕事を続けることで、Missionの追求、Visionの達成に近づくものになっているか、その関係性が大事です。

この3つの考え方は一回作って終わりというものではありません。組織が大きくなっていく過程の中で徐々に言葉が届きにくくなる規模感があります。そのタイミングで改めて見直す、議論する、伝導するということを意識しなければなりません。

顧問先である葬儀社では、「VMVリブランディングプロジェクト」を立ち上げ、有志のメンバーで改めてVisionやMission、Valueについて議論する場をもっています。

理念である「ありがとうが溢れるお葬式」を従業員で改めて見直し、経営者がどのような思いでこの言葉に行き着いたのか、本当に今の会社においてこのValueがベストなのか、そんなことを議論しています。

とても議論が盛り上がり、1回2時間のミーティングもあっという間に終わります。この議論の時間こそが浸透の時間になります。

ちょっと最近会社の「当たり前」に違和感を感じる、なんとなくコミュニケーションにハードルができてきた、そんなときはまさにVMVをリブランディングするタイミングに来ていると言えます。

VMVを軸に置いた未来設計図を作成しよう

会社の未来に対してワクワクできるかどうかが、従業員にとってのやりがい、働き甲斐につながります。

単に施行件数を10倍にするとか、式場を何店舗にする、新規事業をスタートする、といった成長戦略だけではなく、「何のためにやるのか」それを実現するかが大事となり、その「何のために」の中にこそVision、Mission、Valueに表現されています。

顧問先の葬儀社では、毎年経営方針発表会を開催しています。毎年色んな工夫をして、従業員や関連企業様に対してのメッセージを発信していますが、過去の開催において一番従業員がざわつき、そしてテンションが上がったのが「10年物語」を発表した会です。10年後に会社がどうなっているのかを動画にてイメージ化し、従業員に伝えました。成長イメージはもちろんのこと、最も印象が強かったのが、独立リーグへの参入です。

葬儀社なのに、スポーツ事業に参入するという意思表示を社長が行ったのです。これは、安定的な雇用の創出により社員の幸せを守る地域になくてはならない企業を目指すというこの会社のMissionを実現するためのものです。

より地域に根差すという意味合いを強め、さらに葬儀社というもののイメージを大きく変えることで、より働きやすい会社へ、誇れる会社へという意思がこの施策につながっています。

Missionをベースにした戦略なので、聞いている側も「なんでスポーツ?」とはなりません。納得、共感し、それが「ワクワク」につながります。夜の懇親会では、その話題でもちきりでした。

VMVと連動した未来を描く。

それを作ることでより会社が一体化し、未来に向かって走っていくことができます。強い企業を目指す組織開発において、未来設計図はとても大切なものになります。

未来に連動した組織図を作り上げよう

VMVと連動した未来設計図は、いわば事業戦略そのものになります。どのように会社が成長するかを描く際に、もう一つ重要なものが人材戦略です。

いざ何かをやろうといったときに人が足りてませんでは話になりません。一方で採用してすぐに新しいことを任せることのできる人材に育てることも難しいでしょう。ですから「どのポジション(役割)に、いつの段階で、何人必要で、そのためにいつまでに何人採用しなければならないか」を決めないといけません。

そのためには3年後、5年後の「組織図」を作ることが重要です。組織図を作ることで、未来にどんな機能が必要なのかがより明確になります。今、その機能がなければ、だれかポジションを移行させるか、それができる人を採用する必要があります。

マネージャー職が何人必要かを明確にすることで、教育方針も決まります。ある程度候補人材がいるのであれば、そのメンバーにマネージャーになるために必要なことを教育していかなければなりません。逆にその人材がいなければ、採用に動く必要もあります。

先ほど例に挙げた葬儀社も未来組織図を作成しています。それに向けて採用強化に動き出し、マネージャー教育の在り方を変えていきました。10年計画を発表した経営方針発表会からは数年経っていますが、見事に内部から幹部クラスが全員育ち、新たな部門も機能していっています。

また人は成長の要因ともなる一方で、成長阻害要因ともなります。人の採用がその場対応的になっていくと、未来業務に手を付けられなくなり、強い会社とは程遠い状況になってしまいます。

コミュニケーション設計をしよう

VMVは単にコトバ化するだけではなく、どのようにそれを浸透させていくかが大事です。

とはいえ、常日頃の仕事の中で常にVMVを意識することは簡単ではありません。従業員は日々葬儀施行に携わり、お客様対応をされています。時にはクレーム対応もすることもあるでしょう。VMVを意識しろという方が難しいかもしれません。

毎日朝礼で唱和したり、クレドカードを作って持ち歩くということをする会社もあります。VMVを「覚える」という観点では意味がある事かと思います。一方で「浸透」という観点で見ると、それだけでは不足しています。本来伝えるべきは、VMVの裏にある背景だからです。

会社が30名未満の会社であれば、社長の声が直接届きます。なんでこんなサービスをやっているのか、なんでこんな会館づくりにしているのか、この研修はなぜやるのか、社長はすべて答えられるかと思います。

規模が大きくなると、その背景が届きにくくなります。ですからどんな形でその背景を伝えるかを決めておくとより浸透がしやすくなります。これは社長が得意なことをベースに設計することがおすすめです。文章を書くのが好きな社長は、「週報」という形で従業員に情報を届けています。コツは「日常と自社の理念をつなげる」こと。

例えば、

「昨日はサッカーの日本代表戦がありましたね。見事に勝利することができましたが、●●選手のヒーローインタビューが私には印象に残りました。最初の一言目が、まずは足を運んでくれたサポーターへの感謝の言葉から始まったからです。……これは私たちの仕事に置き換えると、お店に足を運んでくれたお客様にまずは『感謝の気持ちを伝える』ということと一緒ですね。……Valueの一つに掲げている「お客様ファースト」が伝えたいことは、まさにこういったところです」

このような書き方で週報を続けると、徐々にVMVのことを理解できるようになります。また別の会社では、映像を使って月に一回社長がメッセージを送っています。店舗が多く、また書くことより話すことが得意なので、映像というツールを使って全従業員に言葉を届けています。

特に面白いと思った会社の取り組みは、オリジナルの名刺入れを作るというもの。名刺入れを開けると、お客様に見えるところにMissionが書かれています。

そんな名刺入れはあまり見たことがありません。それを見たお客様や関係取引先は、その名刺入れのことを聞きたくなります。聞かれたとしたら、それをしっかりと従業員は語れるようにならないと困る、だから自然と理解するようになるといいます。

どのやり方が正解ということではありません。ただ、重要なことは作って終わりということはなく、伝え続ける仕組みをセットで持っておかないと、VMVは会社に根付いていかないということです。

議論の時間こそ大切にしよう

VMVを深く理解していくためには、単に言葉を覚えるだけでは意味がないことはお伝えしました。そのために様々な角度から経営者の言葉として伝えていく必要性も伝えました。

その上でさらに実施したいことが議論の時間を作ることです。VMVへの理解度は考える時間に比例します。まさにそれを体感できたのがクレドプロジェクトでした。

従業員400名を超える葬儀社でのことです。全社員の中から理念の再構築をするために7名程度のメンバーを選出、2週間に1回の議論を半年にわたって実施しました。今ある理念の意味を改めて考えてみる、その意味を「文章化してみる」、自分たちの会社の「らしさ」を考えてみる、従業員にそれを聞いて回る、その「らしさ」を基に行動指針を設定する、議論した内容を独自の「WAY」にまとめて作成する。

最初は戸惑いながら参加していたメンバーも徐々に積極的に発言もできるようになり、また従業員にいろんな話を聞いて回る中で、自分達が理解を深めていきました。プロジェクトにオブザーブとして参加していた社長も、そこに参加していたメンバーの成長ぶりに大いに感心していました。

なかなか難しい議論にも見えますが、実はどの会も2時間程度の会議時間はあっという間に過ぎていきます。普段とは違う頭の使い方もするので、すごく充実感のある時間になります。

改めてリブランディングプロジェクトを立ち上げてみる、または幹部研修、経営方針発表会のような機会を使ってディスカッションの時間を設けるなどといった時間を使いながら、VMVについて考える時間を設けるとその効果は実感できるはずです。

社内プロジェクトをどんどん発足させよう

VMVを浸透していく活動の中で私がおすすめしているのは、社内プロジェクトを通じて浸透を図るという方法です。

浸透活動がそのためだけの企画になったら、なかなか継続しません。前項で上げたVMVプロジェクトも有志のメンバーで行うことで意味はありますが、これを強制的に行おうとしても、やらされ感がでてなかなか効果は出にくくなります。ですから普段の仕事を通じてVMVの浸透を図ることが理想的な形です。

先ほども例に挙げた葬儀社では、VMVの浸透活動として新たに『新卒採用プロジェクト』を立ち上げました。新卒採用活動はそれまでも行っていましたが、なかなか思うような人材の入社につながらないということで、チームを立ち上げてリニューアルを図りました。プロジェクトでは、そのメンバーが改めて自社たち「らしさ」を出してみるところからスタート。その後「らしさ」をどう採用活動に活かすかを検討してきました。

例えば、会社説明会で流す動画を作成しよう。そこに私たちの想いを伝えよう。採用パンフレットは笑顔がいっぱい溢れたものがいい。それが私達らしい!合同説明会の座席配置も円形にして、話しやすくしよう。この距離感が私達らしいよね?といった具合です。

ここで議論する「らしさ」はまさに「行動指針」と連動するものです。プロジェクトの中でいろんな検討、判断をする際に、その判断軸を常に「らしさ」に置くことで、参加メンバーは自然と行動指針を理解していくようになります。それはプロジェクトを離れた普段の仕事においても波及していきます。

さらに成果としても「採用人数」として成果も目に見えます。こういったプロジェクトは他にもいろんなものがあります。

・館内リニューアルプロジェクト
・・・店舗ビジネスの場合、店舗の中の飾りつけやPOPなど、
自分達らしいお店にするにはどうするか?

・イベントプロジェクト
・・・感謝祭等企画する会社。単なるお祭りイベントではなく、
お客様にVMVを感じてもらえる企画を入れられないか

・ユニフォーム制作プロジェクト
・・・ユニフォームを作り直すタイミングで、単に使用者側の使い勝手だけではなく、
私達らしさを表現するにはどんな色やデザインがいいか

これらはすべてわざわざプロジェクトを作るというよりも、普段の仕事をプロジェクト化し、VMVを挟み込むという発想で作り上げたものです。プロジェクトに参加するメンバーが増えるほど、どんどんVMVの理解者が広がっていきます。

心理的安全性を高めよう

Googleが最も生産性の高いチームの特徴を調べた結果、心理的安全性が最も大事な要素であるという研究がありました。

心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動をとったときの結果に対する個人の対応が安全であるかどうかということ。簡単にいえば「このチーム内では自分の意見を伝えても否定されることもなく、安心して働ける状態」のことです。

この体験は私が前職時代に身をもって経験をしたことがあります。私が統括していたエンディングビジネスグループが、全社の中で生産性が最も高い数字をたたき出し、表彰をもらったことがあります。

エンディング業界は市場規模でいえば、医療や住宅、飲食に比べればまだまだ小さいものの、それぞれのメンバーが高いパフォーマンスを上げることでその成果を上げることができました。いろんなグループを見てきましたが、他のグループとは決定的に違うものが「会議」でした。

一言でいうと「騒がしい」のです。それは、単に雑談が多いというわけではなく、みんなが意見をしっかり言い合う時間が多かったためです。

場合によっては、グループトップであるマネージャーの意見に対して、リーダーが反対をする。若手でも違うときは違うといえる。受けたマネージャーも簡単に受け入れるだけではなく、再度自分の意見を伝える。そういったディスカッションの中でやることを決めて、進めていく。そして会議が終われば、先ほどの議論はさておき、笑い話ができる。まさに心理的安全性が高いチームだったと感じます。

では、そのようなチームはどのように醸成されていったか。心理的安全性が低いチームというのは、言いたいことが言えない状態、意見を言ったとしても非難される状態、意見を伝えたとしてもまったく受け入れられない状態です。

ですから、この真逆を繰り返すことで、心理的安全性は徐々に高まっています。若手にも、経験が浅いメンバーにも発言の場を作る。最初は指名する形でも大丈夫です。発言することが当たり前の状態を作ります。出してくれた意見を受け入れることから始める。全然見当違いだとしても、そういう考え方もあるねと意見を受容することが大切です。

そしてこれが最も重要ですが、若手の意見を受けて、上長が結論を変えるということ。それは180度変えるという意味ではありません。全面的に変えなくても、ほんの一部分、その若手の意見を採用する場所を作る。

そうやって自分が出した意見が結論に反映されたという経験を繰り返すことで、意見を出すことが当たり前になっていくのです。自分が議論に参加すれば、決定事項に対する納得度も高くなって当然です。納得度が高まれば、成果につながりやすいのも想像できますね。

情報を仕入れ「自社らしさ」を固めよう

VMVを固めること、様々な形で情報発信を行い、プロジェクト活動を通じて社内にVMVを浸透させていくこと、これらは対社内の活動として大切なことであることはこれまでも述べた通りです。この活動は言い換えれば、「自社らしさ」を固めていく過程になりますが、自社らしさをさらに強いものにするために重要なことがあります。

それは「外の情報に触れる」ことです。世の中には「いい会社」と呼ばれる会社が沢山あります。それはみんなが同じ形の経営をしているわけではなく、それぞれが独自性を持って経営をしています。

経営者が知らない世界を知るということは、自分自身の器を広げることです。

先にも例に挙げた、お付き合い当初赤字だった会社は、当時営業職が強く、営業マンはどうやって売上を上げるか、単価を上げるかという意識が先行している会社でした。

数字部分の情報を全社員にオープンにし、社員全員が経営的な意識を持ち営業をすることで、単年で赤字を解消することができたのは情報共有を徹底したことから実現できたことです。

一方で、3代目となる社長は、次の時代の会社の在り方を考えていました。そこで長野県に会社を構える中央タクシー株式会社に視察に行きました。中央タクシーは日本でいちばん大切にしたい会社にも紹介されており、「お客様が先 利益が後」を経営理念に掲げた理念経営を実践されている会社です。

視察に訪れた3代目社長は、その会社の雰囲気、取組に感銘を受け、会社に戻ってから営業意識が強かった会社に対して、「サービスが先 利益が後」のスローガンを掲げ、会社の改革に乗り出しました。

その会社は、今では従業員が倍になり、多くのお客様に愛され、従業員満足度が高い会社へと成長を遂げています。他社から経営のヒントをもらうことは本当に数多くあります。百聞は一見に如かずといいますが、まさに他社を体験することは会社の在り方をアップグレードする、よりその会社らしさを固めていくのにプラスになります。

経営者はどんどん他社の良い所を学び、仕入れることのできる場所に足を運ぶことをお勧めします。

危機の時ほどVMVを振り返ろう

VMVを構築し、未来を描き、それに向けて一体化を図り成長する。これが良い流れの時は驚くほど会社の業績も好調になります。一方で、組織開発の力が一番試されるのが危機的状況を迎えた時です。

2020年のコロナ危機によりある葬儀社の社長から相談がありました。その会社は従業員40名程度の中小企業。家族経営を謳い、スタッフをとても大切にする会社でした。外部に委託する組織力診断も90点以上という高得点。毎年成長も続け、未来に向けた積極採用も行っていた会社です。そこにコロナショック、売上が大きく落ち込みました。

そこで社長から、「解雇」の相談を受けました。その判断を口にされるのはとても良く理解できました。何より会社の存続が最優先。会社が倒れてしまっては元も子もない。悩んだ末の一つの結論だったと思います。

ただ、そこで私が話をしたのは、解雇は本当の最終手段にしましょう。雇用調整助成金申請、シフト組み換え、別業務への転換、新たな売上確保のための営業活動、まだやり切っていないです。何とか雇用を確保するための悪あがきをしましょう。

なぜなら社長が一番大切にしてきた「創業者理念」の中には、「スタッフは家族である」と書いてあるじゃないですか。

家族をそんなに簡単に解雇してはならない。それをやってしまったら、たとえ会社が回復したとしても、一番大切なものを失ってしまいます。

社長はすっきりとした感じでした。危機的状況の時ほど、VMVに立ち戻り判断する。その判断に基づき、その危機を乗り越えることができれば、さらに強い会社になっていくことは言うまでもありません。

緊急事態宣言から半年たち、この葬儀社はしっかりと業績を回復。すべての雇用は元の形に戻り、さらに次の成長に向けて進んでいます。今回は、「理念を軸とした強い会社創り」の観点から組織開発についてまとめました。これらは葬祭業に限った話ではありません。

ですが、このような会社創りの重要性は、変化が激しい時ほどより重要度が高まってきます。葬祭業界でいえば、成長期が終わり、インターネットでの葬儀もかなりシェアを取り、地域密着で頑張っている葬儀社は、今その在り方を問われています。

その中で、拡大を目指し投資をし続けるのか、地域で必要とされるシェアの高い強い葬儀社を目指すのか、どちらかに向かうかを決めなければなりません。そんな中で後者を選ぶならば、組織開発に注力し、変化に強い会社を目指すことが必須となってくることは間違いないことです。

つむぎ㈱では、葬儀業界の「人創り、組織創り」のサポートを行っています。
従業員一人一人が輝き、やりがいのある葬儀社を目指したい方で、課題がある方は、お気軽にご連絡ください。