心から生きるための対話を

「心から“わたし”を生きよう」

この人生のテーマを見つけたとき、過去の経験があったからこの言葉が浮かんだんだと、これまでの自分を肯定できました。一見無駄に思える負の感情だって、私の大切な感情の一つ。どんな瞬間も、意味があると思うんです。

幼い頃からずっと、大切な人とすらうまく通じ合えないもどかしさを抱いていました。人を傷つける怖さから相手が求める「正しい返答」を手渡すうちに、自分の気持ちをないがしろにするようになったんです。

3歳からピアノを習っていたり、小学生から高校生まで合唱部に所属していたりと音楽が身近にあった私は、あるときシンガーソングライターという存在に惹かれました。歌なら自分を表現できるかも。歌にのせて感覚を言葉にする方法があることに、胸が高鳴ったのを覚えています。

本格的にシンガーソングライターの活動を始めたのは、大学生の頃。始めて3年ほどは、夢を叶えた幸福感に包まれていました。

でも、そこから8年以上ライブ活動を続けても、歌で誰かと通じ合えたような実感はほとんど得られないまま。共感してもらえるように試行錯誤しても、私の言葉ではなくなっていくような窮屈さが残りました。

そんなとき、ひょんなことから対話を学ぶコミュニティに参加したところ、このコミュニケーション方法が自分にぴたりとはまって。受け止めてもらえるから、安心して話せる。初めてそんな場所を見つけたんです。

私がライブでやりたかったのは、音楽を通した“対話”だったのかもしれない。
ようやく自分の本当にやりたいことが、見えた気がしました。

つむぎ株式会社(以下、つむぎ)に出会ったのは、そのコミュニティに参加していた方が紡ぎ手(※)を探していたことがきっかけでした。実は、学生時代にインタビューやMCを経験して、話したり聞いたりする仕事に憧れがあったんです。

それから約2年ほど、安心して話してもらえる空気感を何より大切に、ブランドブック制作に取り組んできました。

ありのままの感情を愛して、言葉にする。事実と事実の隙間に必ずある、その人だけの真実を大事にしています。
たとえば、「ありがとうって言われると嬉しい」と聞いたとき、なぜ嬉しいのかまで一緒に考える。その人らしい感情に惹かれるのは、顔色を伺って言葉を作ってきた私が一番言いたくて、聞きたかったものだからなのでしょう。

あるとき、インタビュイーから「内緒にしてほしいんですけど、実は……」と本音がこぼれ出たことがありました。しかも話していくうちに、人見知りなその方が接客業を続けている理由は、「本当は人が好きだから、なのかも」と一緒に気づくことができたんです。

それは、インタビュアーとインタビュイーという垣根を越えて、まるで仕事のランチ休憩で並んでおしゃべりしているみたいな距離感を生み出せた瞬間でした。

こうして対話をするようにインタビューをして素直な言葉が聞けたとき、自分が磨いてきたスタイルは間違っていなかったと思えたのです。

またインタビューで見つけたきらめく一面は、「あなたのここが素敵です」と手紙を綴るように文章に乗せています。あなたの中に眠る宝石に、気づくきっかけになったら嬉しいです。

今は「感覚を言葉にする」ことを軸に、文章を綴ったり、楽曲制作をしたり、イベントを企画をしたりしています。もちろんインタビューライティングもその一つ。

歌も、文章も、対話も。今の私には、自分の感情をないがしろにしないための手段がいくつもある。そうして自分を満たして溢れた「私らしさ」が、そよそよと風に乗って、あなたの元に届きますように。

わたしとあなたが、自分を心から生きられるようになる日を夢みて。

※紡ぎ手:つむぎ(株)におけるインタビューライターの名称